35羽目 「うん。だからぺたぺた触ったの」
「アリスちゃん。また来てくれたんだぁ」
玄関の扉を開くや否や、メアリがわたしに抱きついてきた。
「あの、メアリって一体何なの? 液体なの?」
わたしは彼女の頭を撫でながら、彼女に対する疑問を包み隠さずに言った。
「えへへぇ。メアリはねぇ、この家に住んでるお人形さんだよぉ」
「に、人形なの!?」
「そうだよぉ」
人形があそこまで爆発するの……? にしても今はピンピンしてるし、この子本当に何なんだろう……? 疑問を解消するために質問したけど、ますます疑問が増えただけだった。
「それで、どうしてまたここにきたのかなあ?」
「あ、うん。実は、一緒に野球出来たらいいなって思って来たんだけど……」
「野球ぅ?」
「うん。後ろにいるのは、わたしのメンバーだよ」
わたしはそう言ってメアリに教える。犬とウサギと植物。まともな人間が今のところわたし以外一人もいないからせめて一人くらいは人間を……って思ったんだけど、案の定というか、やっぱりメアリも人間じゃなかったみたいだ。
「そっかぁ。じゃあ、せっかくだからメアリもやるよぉ」
メアリは指に手を当ててしばらく悩む素振りを見せた後、そう言ってくれた。
「本当!?」
「うん。でも、ルールは知っててもやったことはないから、教えてくれるぅ?」
「もちろん!」
「じゃあさっそく、野球しよぉー!」
「いや、試合するのは明日。今はメンバー探し中。後二人必要なの」
「そっかぁ。それじゃどうするのぉ?」
「それは……あの、ウウ……」
わたしはウウに近づき、耳打ちする。ウウは怪訝そうな顔をしながらも、耳を預けてくれた。
「何ですか?」
「チェシャ猫って、どこにいるの?」
「な!? 私に聞きますかそれ!?」
「だって他に知ってそうな人いないもん。みんな人じゃないけど」
「ぐぬう……。ま、まあ……」
ウウは頭をポリポリと掻いたあと、口を開いた。
「あの人なら、見えないだけですぐそこにいるはずですよ。彼は透明になれるんです」
すると、わたしの足元の空間が歪んで、そこからチェシャ猫が現れた。
「話は全部聞いていた。という訳で、俺も協力させてもらう」
「うわあ! びっくりしたあ!」
「うわあ! びっくりしたあ!」
「うわあ! びっくりしたあ!」
「わぁ~。かわいい猫さんだねぇ~」
みんなが同時に声を上げた。
「はっはっ」
チェシャ猫が悪戯が成功したというように笑顔を見せる。
「いつの間に……」
「さっきからずっと隣にいたぞ」
「全然気がつかなかった……」
「そりゃそうだろ。だって俺はそういう能力を持ってるからな」
ともかく、これで後一人になった。最後の一人は誰にしようかな……と思いながら病院を出た。そしてふと空を見てみると、ルナがハンドスピナーで空を飛んでいたのが見えた。
「アリス」
ルナは綺麗に着地すると、わたしに駆け寄りわたしの口に指を突っ込んだ。
「ふぇふぇ! ……え? 何? 何なの? いきなり!」
わたしは慌ててルナの手を口から離す。
「だってアリス、かわいいんだもん」
ルナがニコニコしながら言った。
「もう、急にそんなこと言わないでよ……」
わたしは照れ隠しのために頬をぽりぽりと掻く。
「ねえアリス、どうしてあなたは野球をするの?」
ルナはハンドスピナーを回しながら率直にわたしに尋ねてくる。
「死刑になりたくないの!」
わたしも率直に答える。
「わかった。僕もあなたのために協力する」
ルナはそう言うと、わたしのスカートを豪快にめくった。
「きゃあ! ちょっと!」
わたしは咄嵯にめくり上がったスカートを押さえる。
「下着の色、白なんだ。タイツ越しでもはっきりわかったよ」
「……っ!!」
恥ずかしくて顔が熱くなる。な……なんで……いきなり……。
「アリス、真っ赤になってる」
「だ、だって……」
「大丈夫だよ。誰にも言わないから」
「誰にも……って! みんな、見てない……よね?」
わたしは震え声で、みんなに尋ねた。
「も、もちろん。見てないですよ。ワン」
ガブは変な声で答えた。
「ごめんね。僕の視線からはずっと見えちゃってるんだ。でも安心したまえ。僕は姪に発情するような劣情にまみれたサボテンではないからね」
サボテンが平然と答えた。
「ごめんなさい……実はアリスさんが寝てるときにこっそり覗いちゃいました……。だって……運命の人のスカートの中なんてなかなか見られるものではないでしょう!?」
ハエトリグサは正直に答えた。
「私は時の神だし今更そういうので興奮したりはしません」
ウウウウは昔は時間を止めたりしてよくやっていたのだと遠回しに答えた。
「俺は……まあ……まあな……」
チェシャ猫も昔は透明になってよくやっていたと遠回しに答えた。
「まだまだお子様ね」
アネモネ、余計なお世話。
「メアリは……もっとすごいこと、やっちゃったもんね……?」
メアリはそう言うと、わたしにキスをした。
「んむ!?」
驚いて口をもごもごさせていると、メアリは舌を入れてきた。メアリの唾液が口の中に入ってくる。
「んくっ……」
しばらくすると、メアリの唇が離れた。
「ぷはあっ! な、何をするの!?」
わたしがそう言った瞬間、ルナがわたしの服を脱がし始めた。
「ちょ、ちょっと!」
「アリス、かわいい……。脱ぎかけの方が、エロい」
ルナはそう言って、わたしの服を全て剥いでしまった。
「ひゃあ! もう! みんな見過ぎ!」
わたしは手で胸を隠す。
「恥ずかしがる辺り、やっぱりお子様ね」
アネモネは余裕たっぷりに言う。
「アネモネさんは経験豊富そうだからいいですけど、私には初めてなんですから」
ガブは困ったような笑顔を浮かべながらアネモネを見る。
「俺も初めての時は緊張したなあ」
チェシャ猫が達観したような顔をしながら言う。
「アリスちゃんの身体、きれい……」
メアリがうっとりとした目つきで言う。
「……っ!!…………っ!!!!」
わたしは恥ずかしさで顔から火が出そうだった。そしてなぜかルナも服を脱ぎ始める。
「ル、ルナまで何やってるの!?」
わたしは慌てて尋ねる。
「野球やるなら、ユニフォームじゃないと」
「そ、それはそうだけど……脱がせる必要あった!?」
「アリスの裸、見たかったし」
「理由になってないよぉ……」
「でもこれで、アリスの肌に触れられる」
「っ……」
ルナの手が背中に触れる。
「あ、あの……まだ触らないでほしいかなぁ……なんて」
「どうして?」
「だ、だって……まだ心の準備とかできてないし! てかみんな黙って見ちゃってるし!」
「こんなにプルンプルンなのに?」
「プルンプルンって……気にしてるのにぃ!」
「じゃあ、揉んであげる」
「わあああああ!! もうやめてえええ!!」
「わかった。もうやめるね。はいユニフォーム」
「へ?」
ルナはいつの間にか、野球のユニフォームを着ていて、同じユニフォームを手に持っていた。
「アリスのサイズに合うように作った」
「わざわざ!?」
「うん。だからぺたぺた触ったの」
「そ、それなら……ってなるか! 別にスカートめくらなくてもよくない!?」
「スカートめくるのは常識だよ?」
「そうなの!?」
「うん。マンガだとよくある」
「マンガではあるんだろうけど、ここはマンガの世界じゃないから!」
「じゃあ、これからはアリスのパンツ見たいときは、見せてって頼めばいいの?」
「違う!」
「難しいなあ」
ルナは首を傾げる。
「もう! とにかく着るね!」
わたしはルナからユニフォームをひったくると、急いでそれを着た。
「ぴったりだね。はい帽子」
ルナが帽子を被せてきたけど、カチューシャが押し潰されて変な感じになったからカチューシャを外してから被り直した。
「あとはグローブとバットだね」
ルナはそう言うと、ハンドスピナーを回した。するとハンドスピナーは光を放ち始め、やがて光の粒子へと姿を変えてゆき、九つのバットになった。そしてまた別のハンドスピナーを回し始めた。すると今度はメンバーそれぞれに合わせた形になっている九つのグローブになった。ルナはまたまたハンドスピナーを取り出して回す。すると今度は光の球が現れる。その球はまるで生きているかのように宙を舞い、ひとりでに動き出し、ルナの周りを回り始めた。ルナはその球を掴み、こちら向かって投げてきた。わたしはそれを両手で受け止め、手を開くと、そこには野球ボールがあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます