31羽目 「しょ、勝負!?」
「しょ、勝負!?」
わたしは思わず叫んでしまった。勝負って――何なんだろう? 茶々のときみたいなあれなのかな? と考えているうちに女王がわたしに言った。
「はい。私はあなたの罪を許してあげたいと思っています。しかし私も女王陛下。許してあげたいから許すという訳にはいきません。なので、私が認めるほどの実力を持っているのであれば、あなたの罪を見逃します。それに、もしかするとあなたが犯人ではない可能性も残っていますしね」
女王はわたしの返事を待つことなく、最初からそうしようとしていたかのように、話を続ける。
「どちらにせよ、このままでは確実にあなたは処刑されるでしょう。死にたくないと思うのであれば、私たちとの勝負を受ける他ありませんが、どうしますか?」
「あの、勝負って、一体なにで勝負するんですか? 決闘ですか? 早食いですか? 腕相撲とか?」
わたしは恐る恐る聞いてみた。
「野球です。私達のチームと試合をして、あなたのチームが勝てばあなたの罪は帳消しにしましょう」
女王は山から水が流れるようにあっさりと、それにはっきりと、そう言った。
「野球……」
わたしは唖然としながら呟いた。野球って、広い場所でバットとボールを使ってやるスポーツだったよね。ルールは確か……ってあれ……?
「あの、わたしのチームのメンバーって、どうなるんです?」
わたしは女王に尋ねた。野球は九人対九人でやるスポーツだ。つまり、メンバーがいなければどうにもならない。
「あなたの好きにして頂いて構いません。まあ、引き受けてくれそうな方がいないと言うのなら、私が知り合いに声をかけても構いませんが」
女王はそう言ってニヤリと笑う。そうなったらあなたの負けは決まりますがねという思いが伝わってくる。
「わかりました。自分で探します」
わたしはそう答えた。そう答える他無かった。
「では、試合開始は明日の十時、場所は城としましょうか。もしその時までにチームメンバーを集めることが出来なければ、あなたの死刑は確定します。それでよろしいですね?」
「はい……」
こうしてわたしは、死刑を逃れるために、チームメイトとなってくれる人を集めて、女王陛下と野球で戦うことになったのだった。
「今日はこれで解放します。また明日、お会いしましょう。……来なければ、わかりますね?」
女王がそう言うと、突如として周りの景色が変わり、わたしは薄暗い路地裏に立っていた。
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