21羽目 「舐めるなぁ!」

「ウウ!?」

「よかった……。間に合ったようですね」

「どうしてここに……?」

「私は時の神です。あなたの元に駆け付けることくらい、造作でもありません」

「そ、そっか……」

「それより早くここから逃げましょう」

「うん……」


 わたしはウウに支えられながら、痛みを堪えて立ち上がると、アネモネを睨みつけた。すると、彼女は爆笑しながら蔓をうねうねさせていた。


「ここから逃げる? 笑わせないで頂戴。そんなことができるはずがないでしょ? 私がいる限り、この病院の敷地からは出られないわ」

「それはどうでしょうか」


 ウウがそう言いながら懐中時計を取り出し、片手で開いた。懐中時計が開かれるとウウの身体は炎に包まれた。やがてその炎の中から、炎をイメージしたような赤い衣装に包まれた女の人が現れた。それを見て、アネモネは驚愕した声を上げる。


「その姿は……まさか!?」

「そうです。これが時の神、ファイアーモードです!」


 そしてウウはアネモネにこう宣言する。


「アリスの魂を喰らいたくば、私を倒してからにして下さい!」

「生意気なこと言ってくれるわね。いいわ。それならお望み通り、殺してあげる!」


 アネモネはそう言うと、ウウに向かって無数の蔓を伸ばしてきた。ウウは右手の人差し指を鳴らした。するとアネモネの蔓は一瞬のうちに焼き切れて床にはらはらと落ちていった。


「何ですって……!?」

「まだやりますか?」

「くっ……調子に乗るんじゃないわよ!」


 今度は鋭い葉っぱを飛ばして攻撃してくる。だけどウウは簡単にかわした。


「くっ……」

「どうしましたか。もう終わりですか?」

「舐めるなぁ!」


 アネモネは蔓を鞭のように振るう。しかし、その全ては空を切るだけだった。


「無駄です」

「くっ……」

「今度はこっちから行きます」


 ウウはそう言いながら左手を上にかざした後、勢いよく振り下ろした。するとアネモネに向かって、巨大な火の球が襲い掛かる。


「くっ……!」


 アネモネは慌てて避けようとする。しかしその前に、アネモネは激しい炎に身を焼かれてしまう。


「ぐああああああああ!」


 アネモネは断末魔を上げ、やがて動きを止めた。

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