16羽目 「やん……アリスちゃ……ああ……ん……」

「ここは……学校なの……?」


 中に入ってみると、やっぱりそこは学校のようだった。廊下には沢山の学生らしき人達が歩いていて、皆楽しそうに話をしたり、友達と仲良く遊んでいた。教室に入ると、先生らしき女の人が出てきた。その人はわたしを見ると、ニッコリと笑いながら話しかけてきた。


「あなた、お名前は?」


 わたしは少し戸惑ったけど、素直に名乗る事にした。


「わたしはアリス!」


 すると彼女はわたしに向かってこう言った。


「アリスちゃん……? ……ああ! 確か今日転校してくるっていう転校生ね!」

「え?」


 転校生? わたしが?


「ちょっとここで待ってて! 校長にあなたのことを伝えてくるわ!」

「は、はい……」


 一体何がなんだかよくわからないけれども、言われたとおりわたしは待つことにした。


「…………遅いなあ」


 十分くらい経ったのに誰も来ない。それにここって本当に学校なのかな……? 学校のような別の場所ってことは無いかな? そんなことを考えている間に誰かの声が聞こえてきた。ふわふわとした高めのトーンの女の子の声だった。そんな声の持ち主は、教室の外からわたしを見ていた。そして教室から勢いよく出てきたかと思えば、目をきらきらさせながらこう言ってきた。


「綺麗な髪だねぇ」


 女の子はわたしの目の前へとやってきた。そういうその子もふわふわの髪がとても綺麗でかわいかった。彼女はわたしをじっと見つめて言ってきた。


「あなた……誰ぇ?」

「わたしはアリス!」


 答えると、彼女はとても嬉しそうな顔になって言った。


「アリスちゃんかぁ。ふぁぁぁ……メアリはメアリだよー。よろしくねー」

「メアリはどうしてここに? そもそもここは一体どこなの?」


 わたしが質問をすると彼女――メアリは眠そうにしながらも答えてくれた。


「んっとね、ここは学校に見えるけど……学校じゃないの……。わたしは……勉強とかが嫌でね、逃げて来たんだぁ」

「そっか……そういうところなんだね……」

「そういうアリスちゃんは、なんでここに来たのぉ?」

「えっと……まあ……成り行きでね」


 わたしは苦笑いを浮かべながら言った。でも本当にそうとしか言えないから仕方ないよね。メアリは「ふぅーん」と言いながらわたしのことをじっと見て「なるほどぉ、なるほどねぇー」と言っていた。そして、急に立ち上がってこんなことを言い出した。


「そうだ! アリスちゃん、うちに来てみないぃ?」

「今から?」

「そうだよぉー」

「うーん……」


 わたしは考える。特に断らなければならない理由も無いし、わたしがここの転校生というのも何かの間違いだろう。それならさっさとここから出てしまった方が都合も良さそうだ。わたしはそこまで考えをまとめた後、メアリの笑顔を見て頷いた。


「うん。いいよ」

「やったあー」


 メアリは嬉しそうに万歳をしながらそう言うと、学校みたいなところを出る準備を始めた。

 

 こうしてわたしたちは学校のようなところを抜け出し、メアリの家に向かって歩き始めた。しばらくそうしているとメアリが立ち止まって言った。


「この角を曲がったところがメアリのお家なんだー。ほら見えてきた!」


 メアリが指さした方を見てみると、確かに大きく立派な家が建っていた。わたしはその家をじっくり眺めた後、メアリの方を向いて尋ねた。


「ここ?」

「そうだよぉー」

 

 そう言うとメアリは家の中にそそくさと入っていったので、わたしも後について行った。家の中に入ると、そこにはたくさんの本棚があった。壁一面が本だらけだ。部屋中に本が置いてある感じでまさに圧巻の光景だった。お姉ちゃんが見たら大喜びしそうだ。


「あ、そこに座って待ってて!」

「うん……」


 わたしはふかふかのソファーに座った。すごく気持ちいいなあ、これ。わたしはソファーに体をうずめ、目を閉じてぼーっとして時間を潰した。しばらくして、部屋の扉の向こうからメアリが出てきた。


「アリスちゃぁん……」


 メアリはトロトロとした目でわたしに寄ってきた。


「ど、どうしたの!?」

 

 なんだか様子がおかしくなったメアリに戸惑いながらもわたしがそう尋ねると、

 

「お菓子持ってきたよー」


 と言って袋の中からお菓子を出してきた。そのお菓子は美味しそうなクッキーだった。匂いも……ああ……すっごいいい匂い……なんだかおかしくなりそう……お菓子だけに……。


「ねぇ、食べてー?」


 メアリはとろんと蕩けたような表情をしてわたしにお願いしてきた。そのあまりのかわいさに思わずわたしは彼女のことを抱きしめていた。


「ちょ、ちょっと……アリスちゃん……くすぐったいよお……」

「ごめんね……」


 わたしはそう言いながら、さらに強く抱きしめた。甘い香りが漂ってくる。わたしより身長が低いけれど胸が大きいからか、抱き心地はよかった。それにしてもメアリの体って柔らかくて温かい。まるでマシュマロみたい……。そんなことを考えていると、わたしの頭が段々とぽわーっとしてきた。わたしはメアリの胸に顔を埋めた。いい匂いがする……。このままずっとメアリのことを抱いていたいなあ……。そんなことを考えていると、メアリはわたしの頭を撫でて優しい声で言った。


「よしよーし……」


 その声があまりに優しかったのでわたしの心は安心感に包まれ、わたしはいつの間にか眠りに落ちていった……。


 目が覚めるとわたしはベッドの上にいた。


「あ、起きたんだねぇ。おはよぉー」


 メアリが笑顔でわたしに話しかけてきた。


「えっと……わたし……寝ちゃってた?」

「そうだよぉー」


 メアリは少し恥ずかしげな様子で言った。わたしも少し照れながら言った。


「えへへー」


 メアリは微笑みながら言った。


「ふふふ」


 わたしたちは笑い合った。そしてしばらくして、メアリが言った。


「あのさあ、アリスちゃん」

「なに?」


 すると突然メアリがわたしにキスをした。


「んっ……」


 メアリの唇はとても柔らかかった。舌と舌が絡み合う。唾液と唾液が混ざっていく。わたしも負けじと、メアリの背中に手を伸ばして、ぎゅっと彼女を抱きしめた。しばらくして、ゆっくりと顔を離す。メアリの顔は真っ赤になっていた。わたしはメアリに聞いた。


「どうしていきなり……」

「えっと……その……えへへ」

 

 頬を染めながら笑っていた。でも、突然の事態に困惑こそしているけども、不思議と嫌な感情は湧いてこない。それどころか……


「もっと、したい……」


 わたしは無意識のうちにそう口を動かしていた。


「えっ? アリスちゃん、何か言った?」


 メアリは首を傾げた。


「ううん、なんでもない!」


 わたしは慌てて誤魔化したけど何を考えていたのかはバレてしまったみたいだ。メアリはわたしのことを見つめながら言った。


「そっかー……なら……もっと……しちゃうぅ……?」


 目をトロンとさせながら、わたしに聞いてくる。


「いいの……?」

「いいよぉー……」


 メアリはそう言うと、再びわたしとキスを交わした。メアリの舌とわたしの舌が複雑に絡まりあって、メアリの唾液がどんどん口の中に流れ込んでいく。わたしはそれを飲み込んだ。メアリの味と匂いと温もりを感じながら、わたしはメアリを強く抱きしめた。


「アリスちゃん、苦しいよお……」


 メアリはそう言いながらも、嬉しそうにわたしに抱きついてきた。


「大好き……」


 わたしもそれに応じて、強く抱きしめ返す。メアリの柔らかい体がわたしに押し付けられて、甘い香りが鼻腔を刺激する。わたしはメアリの耳元で囁いた。


「かわいいよ……」


 メアリは恥ずかしがっているのか、体をモジモジとさせていたので、メアリの耳を甘噛みしてみる。するとメアリはビクッと震えた。


「ひゃあん……アリスちゃぁん……だめぇ」

「えー、なんでダメなの?」

「だって……そんなところ噛まれたら恥ずかしいもん……」


 メアリの声は少しだけ上ずっていてすごくかわいかった。わたしはもう一度、メアリの耳に歯を立てた。


「ふわあああっ」


 メアリの身体は小刻みに痙攣していて、とても可愛らしい。わたしはさらに続けてメアリの体に歯を立てる。メアリは声にならない声をあげながら、わたしの体を押し返そうとするけど簡単に抑え込めた。そしてわたしはメアリの首筋に吸い付いた。


「んっ……」


 メアリの口から吐息が漏れる。その反応を見てるとなんだか楽しくなってきた。わたしはそのまま舌を這わせて、胸の辺りまで舐めていく。


「アリスちゃん……もうやめて……」


 そう言われてしまったのでやめてわたしはメアリから離れたけどすぐに服を掴まれ身を寄せられた。


「やめないで……」

「どっちなの?」

「もっとしてほしい……」


 メアリは顔を真っ赤にして言った。すごくかわいい顔をして。


「えへへー……」


 わたしは再びメアリの唇を奪った。今度はわたしの方からも舌を絡めてみた。メアリの口の中はとても熱くて、唾液はとても甘く感じた。そのままの姿勢でわたしはメアリの胸を優しく揉んだ。わたしの手の中で形を変える。その柔らかさと弾力が心地よい。


「アリスちゃん……そこ……弱い……かもぉ……っ」


 メアリはそう言うと、わたしの肩に小刻みに震えながら額を押し付けた。


「やん……アリスちゃ……ああ……ん……」


 メアリは切なげな表情を浮かべながら喘いだ。わたしはその様子に興奮してしまい、さらに攻め立てた。


「アリスちゃ……はげし……よぉ……」


 メアリはわたしの背中に手を回しながら、そう言った。わたしはメアリの耳元に口を近づけて囁いた。


「もっと激しくして欲しい?」

「だ、だめ……」


 だけどメアリは激しく首を横に振った。わたしは尋ねる。


「どうして? こんなに気持ち良さそうな顔してるのに……」

「だって……」


 メアリは恥ずかしそうに目を伏せながら答えてくれた。


「これ以上は……もう……我慢できないの……」

「もう……我慢しないでいいんだよ……」

 

 わたしはそれだけ言うと再びキスをする。メアリはわたしの体をぎゅっと抱きしめてきた。


「もう我慢できないぃ……」

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