13羽目 「殺人犯のアリスさん」

「どこだろ……? ここ……?」


 わたしはそう思いながら、とりあえず近くにあった扉の一つを開けることにした。その扉はまるで生きているかのように、ギィッという音を立てて開いた。わたしは恐る恐る中に踏み込む。


 扉の先には家具一つない狭い部屋が広がっていて、真ん中にぽつんと一匹の白いウサギが立っていた。そのウサギはウウと同じように二本足で立ち、黒いチョッキを身に着けていた。一見するとウウにそっくりだけど、ウウではないのはすぐに気づいた。このウサギは誰なのかな。わたしがそのことについて訊ねようとしたとき、向こうから話を切り出してきた。


「お前が噂になっている脱走者の殺人犯だな?」

「え? あー……えーと……その……わたしはアリスだよ!」

 

 いきなりそんなことを言われて、びっくりしたわたしは慌てて自分の名前を名乗った。


「ああ。知っているよ。殺人犯のアリスさん」


 ウサギは微笑みながらわたしに言った。わたしは恐怖のあまり、逆に笑顔になってしまった。


「あはは……。ところであなたは何なの? わたしを知ってるようだけど……」

「僕は次世代の時計ウサギだ。お前が会った先代の時計ウサギはさっき死刑が執行されたよ」


 ウサギが言った事に、わたしはショックを受けた。ウウが……死刑に……?


「そんな……」

「心配しなくてもいい。お前も今からそっちの世界に行くからな」

 

 ウサギはそう言うとウウと同じように懐中時計をチョッキから取り出した。すると同時に、わたしの身体に何度も金属の棒で打ち当てられたような激痛が走った。


「う……」


 あまりの痛みに、わたしは意識を失った。

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