12羽目 「時計ウサギは……死刑になりそうだ……」

 ウサギ穴。その言葉にピンときてわたしは頭に稲妻が走ってはっとなり、全てを思い出した。そうだ……この猫は……チェシャ猫だ!


「ウウは!? ウウはどうなったの!?」


 わたしはチェシャ猫の身体を持ち上げながら訊いた。意外と重かった。


「時計ウサギは……死刑になりそうだ……」


 チェシャ猫は暗い表情をして答えた。


「そ、そんな!」


 わたしは思わず大きな声を上げてしまった。でも、やっぱりお姉ちゃんは本を読むのに夢中で、何も聞こえていないみたいだった。


「お願い! なんとかならないの!?」


 わたしが声を荒げながら訊くと、チェシャ猫は申し訳なさそうに小さく口を開いた。


「あなたはもう何もするなと……彼女は言っていた……だけど! 俺は生きていて欲しい。だから、彼女を助ける為に君の力を借りたくて……それで!」

「わかった。教えてくれてありがと!」

「あ……! ちょっと!」

 

 わたしはチェシャ猫の言葉を無視して走り出した。ウウを助けなきゃ! わたしはその一心で森に入る。そして虫が顔の前をたかろうが気にせずひたすら走り続けた。そうしてしばらく走っているうちに、目の前にあの穴が見えてきた。ここに入れば、ウウがいるはず!


「ウウ!」


 わたしはウウの名前を呼びながら、穴の中に飛び込んで行った。中に入るとすぐ周りが暗くなって狭くなる。わたしはバランスを崩さないよう注意しながら滑り落ちた。やがて、少し先に光が見えた。その光に向かって飛び込むと、そこはたくさんの扉が並んだ広間だった。

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