★オチヨ・ランダー『盗賊・槍』視点 2
★
オチヨは、走りながら瞬時に考えを巡らせた。
自分の認識を改め、目の前の現実に対抗すべき道を探る。
どうする?
まだこの大男は、武名の詠唱すらしてないのに、これ。
もし
先ほどは、一番槍を獲るべく抜け駆けたまでは良かった。
眼前の大男は、巨人に
圧倒ォ~的ィッッ 筋ッ肉ッ量ォ~ッッ!!!
圧倒ォ~的ィッッ
大男の筋肉からほとばしる霊圧が空間を歪ませ、その間合いの広さを告知してくるのだ。
尋常ならざるデカさの
オチヨは、決断した。
「止まれッッ」
大男の間合いまで、ほんの数歩手前。
ギリギリの距離で急停止は間に合った。
ギリギリである。
オチヨと一緒に走っていた
オチヨ同様、時代に
歳は、オチヨの五つ下。
数年前
若小姓を
旗本
信じていた物に裏切られ、全てを失った境遇に置いても、その気は変わらなかった。
だが、カレンに出会った時、全ては変わった。
二人で
初めて
名だたる武人貴族や、
裏切り裏切られの修羅道を行く身に、最後に残るは愛の力のみ。
愛の力こそ、生命の
今、オチヨは苦悩していた。
引くべきか、進むべきか。
考えあぐねるオチヨの眼前で、大男が
その笑顔は、
殺気など生やさしい。
その獰猛な
並の武人であれば、この武威に触れるだけで
……やはり、ただ者では無い。
こやつ、なんという
しかし……しかしだ。
これ程の
よし。
オチヨは、一つの決断を下す。
やるしかあるまいッッ!
全てを出し切る。
息を大きく吸い込み、興奮を鎮める。
胆中に在する全ての
さらに……
オチヨは、汗ばむ手で、呪術
戦場において、武人の強固なホマレ防御を撃ち抜くために開発された武器である。
この槍に溜め込んだ
オチヨは、中段に仕込まれた
何を迷っているのだ。
カレンと共に
例え全て失おうとも、一向にかまわなかった。
目前には、膨大な
奴から奪えばよい。
生き胆ごと
視点を変えれば何のことはない、
オチヨの瞳がギラリと輝く。
全身に、再び活力が戻る。
紅玉火龍槍の石突きを地面に突き立て、
今オチヨにあらん限り、全ての
「我が武名は、
「同じく、
全ては
オチヨは吠えた。
「
これで、相手が武名を詠唱すれば、
互いの
オチヨとカレンの二人は、大男の返答を待った。
だが、続く大男の返答は、オチヨの命懸けの決意を
よりにもよって、自分の武名すら分からないとか言い出したのだ。
オチヨは、武人の
それでも、冷静な部分が、大男の挑発に耐えた。
逆に、挑発を返す事で、大男に
ビカビカビカッカカカカッッ!!
なッッ!?
突如まばゆく光る大男の姿にオチヨの
「……バイタツ!!! 俺の名前は、バイタツだッッッ」
大音量。
爆発的にバイタツを名告る大男から圧が放出された。
ブゥワッッッ!!!
土煙が天高く舞う。
突然の風の流れが、バイタツと
まるで呪術者が、風を操る
渦巻く
辺り一帯の空間が激しく歪む。
バイタツを
離れた場所にいるオチヨの元まで、その圧は届き、ホマレ防御を超えて皮膚を
土煙が晴れると、猛々しき武名が空に現れた。
ばッ……ばかな……
オチヨは、驚愕に身を震わせた。
あり得ないモノが目に入ってきたからだ。
”バ・イ・タ・ツ !!!”
荒ぶる武名が空に現れ、
しかも……
大量の承認を集め、その名を天下に轟かせなければ有り得ない大きさ。
まさに、
なのに……
オチヨは、その名を知らなかったのだ。
オチヨは、混乱した。
それもそのはず、これほど巨大な武名、知らぬ訳などあり得ない。
通常、
なのに、目の前に浮かぶ武名には、
ただ、バイタツの名があるのみ。
聞いたこともない名である。
さらには、これほどの
にも関わらず、ただ武名のみが、バイタツを
まさに、あり得ない光景であった。
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