座敷わらし

ツヨシ

第1話

上司がにやにやしながら私を見ている。

わかっている。

話を聞いてもらいたいのだ。

この人はいつもこうだ。

ほんと、めんどくさい。

「どうかしましたか?」

「いやーっ、俺はついてるよ」

「なにかあったんですか?」

「新しいマンションに越しただろう。そこに出るんだよ」

「なにがですか?」

「座敷わらしだよ」

上司によると、引っ越したマンションに、昔の着物を着た女の子が出るそうだ。

上司に言わせるとそれは座敷わらしで、座敷わらしを見た者には幸運が訪れるそうだ。

「そうですか。それはよかったですね」

私は適当なところでうまく話をきり上げた。

上司の引っ越したと言うマンションを、私は知っている。

私の家のすぐ近所だからだ。

長らく空き家だった古く庭の広い家を取り壊して建てたものだ。


そんな話があった数日後、その上司が突然会社を辞めてしまった。

それも電話一本で。

近所だから見に来てくれと別の上司に頼まれて見に行ったが、上司はすでにそこにはいなかった。

誰も行先を知らない。

しばらくして、親族が上司を探していると言う話が、私の耳に届いた。


さすがに気になった私は、もうすぐ百歳だがいまだに元気だという近所に住む長老に聞いてみた。

すると長老が言うには、その長老が七歳くらいの時に、マンションの前にあったあの庭の広い家にいた長老と同い年の女の子が、殺されたのだと言う。


       終

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座敷わらし ツヨシ @kunkunkonkon

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