第2話 二代目姫子・襲名の儀
けど、よく見れば、そいつは姫子じゃなかった。
っていうか、3年前に逝った姫子のはずがない。
そいつは……いや、その犬は、見るからにヨボヨボの老犬で、まさかと思うがこの時代に野良? そう考えたくなるほど被毛はバサバサで、全身が泥にまみれている。
目がよく見えないのか、フラフラ歩くたびに建物や塀にぶつかるし、耳も遠いのか平気で車の往来が激しい通りへ出て行こうとするので、危なくて放っておかれない。
――おまえ、どうしちゃったんだよ~。(T_T)/~~~
こんなところをフラフラして、どこんちの子だ?
ぼくはしゃがみこんで、老犬に訊いてみた。
犬はおとなしく訊かれるままになっている。
泥と雨で塗り固めた置き物みたいだが、本人(犬)にその自覚はないらしく、気のせいか、いかにも人(犬)の好さそうな笑顔で、長い尻尾をゆったりと振っている。
🐶
どうしようか……。
ぼくは考えてみた。
いま保護してやらなければ、そう遠くないうちに、たいへんな事態になるだろう。
それが分かっていて知らん顔をしたら、空のとうさん、悲しむだろうな、きっと。
「とうさん、ざんねんだよ。おまえという子は、ほんとにそんな子だったのか……」
さびしげにつぶやく、とうさんのなつかしい声が、雨空から降って来そうだ。☔
――さあ、こっちへおいで。(*´ω`*)
両手を広げて、そうっと呼ぶと、老犬はおどろくほど素直に全身をあずけて来る。
まるで、そう呼ばれることが分かっていたみたいに、なんのためらいもなく……。
🪅
それが二代目姫子とぼくとの出会いだった。
あとになって、ぼくは考えることがあった。
――もしかしたら、とうさんからのプレゼントだったかもね。(^.^)/~~~
大のとうさんっ子だったぼくの目は、そのころにはさすがに乾いていたけど、心の奥の一番底の部屋に隠してあるなみだの壺は、いつだって溢れたがっていたからね。
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