第16話 ダンジョンの守護獣
ワタシが自意識を獲得したとき、すでにダンジョンに捕らわれていた。
別の言い方をすれば、ダンジョンの依り代のしもべとなっていた。
依り代とはダンジョンの心臓部。ダンジョンを創造する存在。
ワタシは、いつの間にか依り代の守護者に選ばれていた。
守護者とは、依り代を侵入者から守る存在。
ワタシだからなのか。誰でもよかったのかは、わからない。
ワタシは、依り代から魔力と知識を与えられていた。
ワタシの種族は大蛇だ。
しかし、与えられた魔力のせいか、ワタシの
ワタシが守護者になって約100年は経過している。
ワタシの種族の寿命はとっくに過ぎている。
ワタシは、依り代によって生かされているのだろう。
どうやらワタシは、依り代から供給される魔力によって魔獣化しているようだ。
約100年の内にダンジョンも成長し、領域が2層になった。
ワタシが守護者になった時、このダンジョンは普通の森だったし、ワタシも大蛇として標準的な大きさだった。
劇的に環境が変化したのは、ダンジョンに2層目が出来てからだ。
この森は、もともと霧が発生しやすい環境だったが、ダンジョンの魔力の影響で頻繁に霧が発生するようになったり、森の生態系が徐々に変わっていったりした。
ワタシも魔力の影響で約100年をかけて巨大化していった。
しばらくして、侵入者が2層目に現れるようになった。
最近は霧が領域内に常時発生しているのだが、ワタシにとっては大した影響ではない。
むしろ過ごしやすい環境だ。
ワタシは守護者なので、依り代がある領域の外には出られないが、苦にならない。
この領域はかなり広いし、ダンジョンがある森の湿地帯は、そもそもワタシの生息地だ。
約100年もの長い間、ワタシは守護者をやっているが、一度も依り代より与えられた力を侵入者に振るうことはなかった。
今日この時までは。
依り代のいる領域に初めての侵入者が現れた。
それらは、領域の入り口に立っている。
それらは、獣人と得体の知れない存在だった。
その存在は、人の形をして人の生命力と魔力を持った、人ではない何かだった。
その存在は不気味ではあったが脅威ではなかった。
獣人と比べたら無視していいくらいだ。
獣人は圧倒的強者だ。
このダンジョンに生息している魔獣など比べようがないほど強い。
勿論ワタシを含めてだ。
恐怖すら感じない絶望的な差。
しかし、ワタシは守護者。
依り代を守るため戦わなければならない。
一瞬で殺されようとも。
ワタシが、依り代の前でそれらの様子をうかがっていると、獣人が何か発声したかと思ったら、隣にいる存在の足元に魔法陣が展開された。
(魔法?アレは魔道具なのですか?)
次の瞬間、その存在は一瞬で消えた。
(!?)
ソレはワタシの背後、依り代の前に現れ、またすぐに消えた。
(!?)
獣人の隣、元の位置に現れたソレは依り代である剣を持っていた。
そのまま獣人とアレは、ワタシと戦うことなく領域の門を越えダンジョンの外に出て行った。
ワタシは、全く相手にされていなかった。
依り代が領域の外に出たことで、領域の結界が砕け散りダンジョンの崩壊が始まった。
ワタシは、何もすることなく守護者の役割を終えた。
ワタシは、ダンジョンから解放された。
ワタシは、この先何をすればいいのだろうか。
ダンジョンはこの先、領域内に溜めた魔力を周囲に拡散しながら、徐々に以前の姿に、自然な状態に戻っていくだろう。
だがワタシは成長しすぎた。不自然に魔力を持ちすぎた。
魔獣化した大蛇としてこの地に留まっていいのだろうか。
そもそもワタシは・・・大蛇なのだろうか。
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