第3話 超能力の付与

僕に超能力を付与する。と彼女は事も無げに言った。


「厳密にいえば『おぬしに超能力っぽい力を付与する』じゃ」


「っぽい」ってなんだろと僕は疑問に思ったが、会話を続けることにした。


「超能力の付与ですか。僕、超能力の使い方わからないんですけど」


「わかっておる。わしはおぬしの世界を調べたのじゃ。

改めて聞くが超能力者は存在しておらぬのじゃな?」


「はい」


「説によると精神力を使うようじゃが、それも持っておらんと」


「はい。僕は感じたことありません」


「おぬしは、この世界の住人ならば持っておる魔力を持っておらぬ。

ならば生命体なら持っておる力、生命力を超能力の源とするのじゃ」


「生命力ですか」


「うむ。生命力はこの世界で使われておる力。

おぬしが生きておるだけで存在し、おぬしが意識的に操作する必要もない。

おぬしが超能力を使うたびに消費されるだけじゃ」


「なるほど」


「生命力を超能力に変換する仕組みは、わしが構築しておいた」


「それを僕に付与してくれるのですか」


「うむ。後はおぬしがわしの創った超能力を使いこなすだけじゃ」


(僕、超能力者になるのか。

魔法を使って見たかったけど魔力が無いんじゃ仕方ないか)


「ちなみに超能力はこの世界にも存在しておらぬ。

魔法で似たようなことは再現できるがの」


「そうなんですか」


「まあ、いわばおぬしは意志を持った魔道具みたいなものじゃな」


(・・・え、魔道具?)


「では簡単に超能力ついて説明するかの」


彼女の口から不穏な単語が聞こえてきたが、とりあえず説明を聞くしかない。


「お願いします」


「おぬしに付与する超能力は、


テレポーテーション(瞬間移動)。 


サイコキネシス(他動的念動力)。


テレキネシス(自動的念動力)。 


パイロキネシス(発火能力)。


クレアボヤンス(透視、千里眼)。


テレパシー(精神感応)。 


身体強化。


予知。


結界。 


霊感。


などじゃ。とりあえずは基本的な奴じゃの」


「いっぱいあるんですね。ひとつだと思ってました」


「うむ。わざわざ制限する必要なかろう。わしが付与するのじゃし」


「ありがとうございます」


「超能力の発動の仕方などは、あとで説明書を渡すので、

それを読んで理解を深め、おぬしなりに活用するのじゃぞ」


「はい」


僕は何だが楽しくなって元気よく返事をした。


(テレポート使ってみたい。まさに夢のようだな)


彼女がじっと僕を見る。


「しかし、おぬし落ち着いておるのう」


「はぁ。まだ異世界にいる実感がなくてですね。

状況の変化に理解が追い付いていないだけだと思います」


「なるほどのう」


興味なさそうな返事が返ってきた。すると。


コンコン


ドアがノックされた。


誰かが来たようだ。と、思った次の瞬間。


僕の背筋は、寒さを通り越し凍りついた。


僕が彼女に初めて会った時以上に体が固まる。


彼女には恐怖を感じなかったのに。


僕の後ろにある扉が、ゆっくりと開いていく音が聞こえてきた。


それと同時に、ねっとりとした恐怖が流れ込んできたような幻覚に襲われた。


誰かが静かに入ってきた。


部屋の中で衣擦れの音だけが、やたらと大きな音を立てている。


「遅くなりまして申し訳ございません。姫様」」


僕の耳に美しくも恐ろしい女性の声が重なって聞こえてきた。


僕の背後で、入ってきた二人が少女に頭を下げた気配がする。


僕は怖くて見たくないはずなのに、

どういうわけか彼女達の方に顔が引き付けられてしまう。


僕は抗うことが出来ず、とうとう振り返ってしまい彼女達の顔を見てしまった。


「けも・・・みみ・・・」


メイドの格好をした美人の獣人達を確認した僕は、

彼女たちの殺意に満ちた視線に耐えられず、




気絶した。




・・・






「お前たち、なぜこやつに魔力を込めた殺気を向けたのじゃ。

死ぬとこじゃったぞ。見るがよい。お前たちのせいでぶっ倒れておる」


「申し訳ありません姫様。魔力を隠した坊主頭がいるとは思いませんでしたので」


「魔力を全く感じさせない怪しげな坊主頭がいたもので。つい」


「こやつには魔力がないのじゃ。そもそも部屋に入る前からこやつの気配は感じ取っておったじゃろうに」


「それにしても、なぜこんなに貧弱な生物を連れて帰ってきたのですか?」


「なぜか結界内に紛れ込んでしまったのじゃ。偶然じゃ」


「そうでしたか」


「一応こやつを魔法的に調べてみたのじゃが、特に変わったところはなかった。ただの生命体じゃった」


「なるほど。不思議ですね」


「姫様。これをどうするおつもりですか」


「どうもせぬ」


「婿候補ではないと」


「あたりまえじゃ。なんでそうなる。研究材料みたいなものじゃ」


「なるほど、研究ですか。承知いたしました。以後そのように対応します」


「わかったら床の掃除とそやつを綺麗にしてくるのじゃ」


「承知しました」」


「それと、そやつからいつものようにいろいろ採取して、実験室へ運んでおくのじゃ。あのメイドに能力を使わせるのじゃぞ」


「はい」」


「ところで姫様。そのお姿とお召し物はいかがされたのですか?」


「ん?おお。幻術を掛けておったのを忘れておった。 

こやつの世界の情報を元に作ってみたのじゃ」


「そうでしたか。見目麗しいお姿でございます。 

それでは、わたし達はこれで失礼いたします」


二人のメイドは僕を抱えて出て行った。


「やれやれ。予定が狂ったがまあよかろう。 

あやつが寝ているうちに超能力の付与を済ませるかの」


そう言うと彼女は、何もない空間から2冊の本を取り出した。




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