第13話 〈最初で最後の〉
「こんな何年も忘れられないくらい、彼のこと、好きだった?」
「どうだったのかな~。好きだったって思いますけど、中学生の好きって、どの程度の好きだったのかなって。一生この人と一緒に!なんてほど考えてなかっただろうし。
好きだった気持ちも、こじらせてるうちに後付けしちゃってるような気もするし。
“一生”は考えられなかったけど、“来年”は普通にくるんだと思ってました。
しろちゃんにとっては、犬に似てるなんて女じゃなくて、ビビッてきたんでしょうね。
運命の人に出逢った!!みたいな感じで。
近々、結婚するみたいです、その彼女と」
「へぇ~。それで、吹っ切りたくなったんだ?」
「あ、それもありますね。でも、まだ誰かと恋愛出来る気もしないので、とりあえず、卒業したいかなって」
「それに関しては、誰でもいいんだ?見ず知らずの俺で?」
「いいです。いいです。なんなら、私、一生恋愛できないかもしれないんで、これが最初で最後のえっちかもしれないですけど。よろしくお願いします」
「最初で最後とか言われちゃうと責任重大だな。でも、まっ、俺テクニックあるし、上手いから、痛くないようにするからさ。安心していいよ。
あ、どこって言わなくていいけど、大学、いいとこの大学でしょ?」
「いいとこかはわかんないですけど。偏差値高いところです」
「やっぱな。優秀そうだもん」
「いえ、高校時代、フラレた反動でただひたすら勉強してただけだったんで、全く遊ばなくて。
だから、普通に入れただけです」
「普通にね」
「高校、志望校じゃなくて、しろちゃんと同じ高校に入っていたら、続けられたのかな?とか、それでもあっさりフラレて、出逢った人と付き合っちゃってたのかな?とか。
そしたら、同じ高校でそれを見てるのは、耐えられなかっただろうな、って。
で、あのまま付き合ってたら、しろちゃんのことしか考えられなくて、うつつを抜かして、勉強なんてしなかっただろうな~って。
そしたら、今の大学には入れなかったし……
だから、結果オーライなのかもしれません。
中学時代の初恋をこんなにも引きずるとは思ってなかったですけど。
なんか、こんな風に自然消滅って、あるんだな~って。
なんか、他人事みたいに思わなきゃ、やってらんなかったですけど。
あ、ほんとに長話しちゃって、すみません。
恥ずかしいんで、灯り 消してもいいですか?」
ーー 終 ーー
自然消滅って、あるんだ 彼方希弓 @kiyumikanata
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