二人きりの部室

 昼休憩を終えて教室へ。

 午後から時間があっと言う間に過ぎ……放課後。帰ろうと立ち上がると、例の如く聖が俺の行く手をはばむ。


「なんだ、聖。今日も俺と一緒に帰りたいのか――って、なんだその格好」

「体操着だよ」

「今日、体育の授業なかっただろう。なんで?」


「わたし、ある部活をしているの」

「あれ、そうだっけ? そうか、じゃあ邪魔しちゃ悪いな」


 適当に手を振って俺は帰ろうとするが、聖は俺の手を掴んだ。……なっ。


「なんだよ。聖は部活なんだろ?」

「柚菜に部室へ来て欲しいの」


「なんで俺が……?」


「体験入部して欲しいからっ」

「はぁ? そんな時間は――うわっ」


 手を強引に引っ張られて俺は強制連行されていく。



 * * *



 学校の三階。

 かなり隅の部屋に入った。

 こんなところに部室あったっけ。


 入っていくと、そこは椅子と机がひとつあっただけ。



「なんだここ? なんの部活なんだ?」

「柚菜、そこの机に座って」

「机に? まあいいか」



 机の上に座る。

 どんな活動をしているんだか。てか、他に部員もいないし、どうなってる。


 疑問に思っていると、体操着の聖は突然俺に抱きついてきた。



「……柚菜」

「は、はぁ!? お、お前……いきなりなんだよ」


「部活をはじめよ」


「はじめよって、なんの部活!?」


柚菜を襲う部・・・・・・


「え……ちょ、なにそれー!?」



 部活でもなんでもないじゃないか!

 ただ俺を襲うためにこんな誰もいない教室に連れてきて……うわ、逃げられないよう腕を回されてしまった。


 胸に聖の顔が沈み、俺は動揺する。



「柚菜とずっとこうしたかった」

「ひ、聖。俺、女だぞ」

「うん、知ってる。あ、言っておくけど、わたしもちゃんと女の子だから。確認する?」

「しねーよ!!」



 聖のヤツ、なにを言い出すんだ。確認しなくとも分かるって。ていうか、この状況なんだ。俺はなんて女子である聖から襲われているんだ!?


 いや、だけど……う~ん、なんだか悪くはなかった。



「はぁ~、柚菜の胸大きくて癒される」

「お前な。まあでも、女友達の距離感ならこんなもんか」

「うんうん。って、友達ぃ?」


 しまった、つい口が滑った。


「……う、うるさいなっ」

「いいよ。キスしよっか?」


「……へ」

「ほら、ん~」


 目の前に聖の唇が迫っていた。


 え……え、俺、その……まだ心の準備が。いやいや、それどころか俺は聖が好きなのか……? でも、この胸の高鳴りはいったい……。

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