禁断の保健室

 手を握られたまま何故か保健室へ。

 保健室の先生は不在だった。


 聖に引っ張られる俺は、ベッドへ連れ込まれ、押し倒され――。



「って、聖。ふざけるなっ」

「え……だって、柚菜が取られちゃうかと思ったんだもん。だから、その前に襲っておこうかなって」


「ヤ・メ・ロ。助けてくれたことには感謝するけど、襲うなッ!」

「いいでしょ~、柚菜ぁ」



 俺の胸に顔を埋め、スリスリしてくる聖。



「……うわ! ばかっ」

「でも、そんなに嫌そうじゃないよね?」


「う、うるさいな」


「そっかそっか。じゃあ、今はここまでにしておく」

「今は?」

「あれ、柚菜ってば、もっと触って欲しかった~?」


「……っ」



 いかんな。最近、聖のペースに飲まれている。俺としたことが、ちょっと期待しちゃった。そんなのだめだめ。



「それじゃ、お昼ごはんにしよっか」

「そ、そうだな」



 食堂へ向かい、クリームパンを購入。そのまま庭にあるベンチへ向かった。



「柚菜って本当にクリームパン、好きだねえ~。ツイッターにも写真アップしてるし」

「まあな。そういう聖って、真似しているじゃないか」

「だって、美味しいもん。ねえ、柚菜のちょうだい」


「ちょうだい? 同じクリームパンじゃないか。意味なくないか」

「意味はあるの!」



 同じクリームパンなのに、ちょうだいとは……まあいいけどさ。

 ちぎって渡すと、聖も同じように自身のパンをちぎって渡してきた。



「意味ねえ!」

「あるある! これがいいの!」



 はぁ、分からん。

 聖の考えはよ~く分からん。

 だけど、なんか凄く幸せそう。


 ……って、あれ。



「聖、これクリームパンじゃないな。チョコパンだ」

「そう! だから意味はあるって言ったでしょ~。それに、クリームとチョコが合わせって甘々。柚菜の食べかけだったから、余計にっ」


 そんな笑顔になられると、俺も悪い気はしなかった。――って、なに言ってんだ俺。


 誤魔化すようにスマホを取り出してツイッターを眺める。さっき何気なく投稿した『クリームパンが美味しいですわぁ』の最新の“つぶやき”が妙にバズって『いいね』がもう一万件あった。


 ……チョコが美味いな。

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