デートの約束

 あっという間に朝を迎えた。

 夢をみなければ一瞬だ。


 そう、俺は最近夢を見なかった。

 夢ってなんだろうな。



 制服に着替え、アパートを出る。



 通学路を歩いていると、ニヤニヤ笑う聖の姿があった。こちらに向かってきて「おはよ」と挨拶。



「おはよ。なんだ、聖」

「昨晩のソロモン、最強の可愛かったからさ」

「そ、そうか。それは良かった」

「ねえねえ、柚菜。今度、水族館に行かない?」


「なんだやぶから棒に」


「デ、デートしようよ。一度くらい良いでしょ?」



 デートのお誘いだと?

 ていうか、女同士なんだから“遊びに行く”が正しいはずだけど。でも、聖からのせっかくのお誘いか。


 普段、スパチャをたくさん貰っているし――いやいや、聖だけを特別扱いできない。他のリスナーさんからもいっぱい戴いている事実がある。


 だから、聖だけを……。

 だけを……。


 だが、彼女からは百万円以上を超えるスパチャを貰っている。それに、リアルの知り合いでもあるし――それに、最近は優しくしてくれる。


 少しくらいお礼をしてやってもいいのではないだろうか。


 そうだ、同級生と遊ぶだけじゃないか。なにを悩む必要がある。VTuberのソロモンとしてではなく『桜庭柚菜』として付き合うだけ。それだけだ。



「分かったよ。ちょうど明日が土曜日だっけ」

「うん。スケジュール空いてる?」


「ああ、いいぞ」

「マジ! やった!! 柚菜、最近変わったね」

「そうか? 俺はいつもこうだぞ」

「ううん、最初はわたしを嫌がっていたもん。あからさまな態度だったよ?」


「そりゃ、あんなベタベタされればな。けどまあ、聖にはお世話になっているし、その、リアルの知り合いだし」


「知り合いねえ~。でもいいよ、絶対に友達以上の関係になってみせるし」



 それが怖いんだがな。

 そうして学校に到着。

 教室へ向かい、退屈な授業が始まった。

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