ソロモンは悪役令嬢

 二十三時になって、配信を始めた。


 今日は同時接続数が八万人。

 平日でこれなら十分。


 聖からも相変わらずのスパチャ乱舞。これ、毎日続くの?


 今日は控えめだけど、それでも一万円の嵐。


 聖のヤツ……まあいいけど。



 ゲームのプレイを進めていく。

 実況配信している“Last”はサバイバルゲーム。サーバー毎にプレイ人口や仕様も変わる。日本人が公開しているサーバーもいくつかあり、俺はソロプレイしていた。


 今日は集めた材料で家を作った。


 まずは拠点を作って固めていかないと。



「楽勝ですわね。あとは銃も作って参りましょう」



 ――と、俺はいつもの・・・・お嬢様口調で実況を始めていく。そう、ソロモンはお嬢様設定。というか『悪役令嬢』だった。


 そのため、ガワもオホホな令嬢。銀髪縦ロールでルビーのような赤い瞳。可愛いカチューシャとかアクセサリーをつけて、現実の俺とはかけ離れたキャラだった。


 だけど幸運なことに、俺のアニメ声は視聴者リスナーを夢中にさせた。お嬢様口調で大らかに喋るとウケがいい。


 そうして俺はいつの間にかバズるにバズりまくって、この地位を築き上げたんだ。



 コメントは、みんな優しくてノリにノッてくれていた。スパチャもどんどん溜まっていく。


 そうして、配信は無事終了。

 直後、聖からラインが来た。



 聖:今日の配信も最高でしたー!


 柚菜:それは良かった


 聖:柚菜の声って最強のASMRだよねっ


 柚菜:そ、それは嬉しいけどね


 聖:寝る前に聞きながら寝てるよ


 柚菜:声だけは自慢だ


 聖:うんうん。それじゃ、また明日ね


 柚菜:ああ、おやすみ


 聖:ちゅ~(キスのスタンプ)



 ――やれやれ、聖は相変わらず。だけど、俺のことを思ってのこと、なんだよな。ここまで気に入られては配信者冥利に尽きるっていうか。


 嬉しかった。

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