No.1のVTuber ソロモン

 プリンを味わった後、自宅のアパートへ向かった。聖がついて来ようとするので、俺は途中でダッシュ。聖をいた。


「あー! 柚菜ってばー!!」


 聖は叫んでいるが、さすがに自宅のアパートを特定されたくない。無断で入られたりしたら大変困る。


 直後、ラインが来た。



 聖:なんで逃げるのー! 柚菜の家に行きたいじゃん


 柚菜:家には上がらせない。絶対に


 聖:ちぇ~。いつか遊びに行かせね!


 柚菜:やだ。絶対にやだ


 聖:けちぃ~! いいじゃん~


 柚菜:ケチで結構。聖の家だったら遊びに行く


 聖:ほんとー。それないいよ


 柚菜:百年後くらいに


 聖:ひどぉぉい。まあいいや、配信楽しみにしてる



 そこでラインを終え、俺はアパートへ。ようやく静かな部屋に戻って来れた。まずは、ツイッターをチェック。


 今日の配信予定をつぶやく。


 直ぐに大量の『リツイート』と『いいね』が殺到。既に数千件を超えた。これだけでも相当な自己肯定感がアップする。


 俺は、世界中から必要とされているんだ。これがつまり、自己顕示欲というやつらしい。けど、俺はみんなが喜んでさえくれれば、それで良かった。



 聖もきっと、今俺のツイッターをチェックしているに違いない。ちょっと笑いが漏れつつ、俺はお風呂へ。



 ――シャワーを浴び終え、髪を乾かす。



 ネットニュースを見て回ると、今日も“ソロモン”の話題一色。そんな中でも『新人VTuberソロモンが配信界隈を揺るがす!? No.1の王座に君臨! 止まらぬチャンネル登録者数、株価に多大な影響も』なんて見出しもあった。



 そうだったのか。

 そもそも、投げ銭とかそういうのは大体事務所が持っていってしまう。自分の懐に入るお金なんてたいした金額ではない。


 それでも裕福には変わりないけれど。



 ネットを閲覧していると、女性マネージャー『澁沢しぶさわ』さんから電話が入った。



「はい、桜庭です」

『柚菜ちゃーん。今日も配信がんばってねー! 企業案件もびっくりするくらい電話とかメール殺到中。あの海外最大手のゲーム会社から、うちのゲームをプレイしてくれとか沢山きてる』


「マジっすか。でも、俺、今は『Last』プレイ中ですよ」

『ああ、そうか。まあ、考えておいて。じゃあね』

「は、はい……」


 電話が切れた。

 ここ最近、コラボ依頼とかも多い。けど、下手に動くと直ぐに大炎上。気を付けて行動しないとな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る