一緒に帰りたい

 放課後になって、また聖は俺の机に乗ってきた。


「……えっと、なに」

「一緒に帰りましょう」

「お断り。聖、考えはこうだろ。一緒に帰る振りをして、俺の家を特定しようとしているな」


 バレた――みたいな表情をする聖。やっぱりか。実に分かりやすい。



「ところで桜庭さん」



 あ……話をらされた。

 やっぱり図星だったか。



「ん、なに」

「ソロモンのお嬢様口調、あれってそういう設定だったんだね」

「……うぐっ!」


「いつも“ですわ~”とか言ってるよね。今、言ってみてよ」

「言えるわけない。特定されちゃうし、契約違反になりかねない。VTuberは仕事だから」

「そっか、ごめんね」


 少し落ち込む聖。

 ちょっと強い口調で言い過ぎたかな。でも、情報には守秘義務がある。事務所の定めたルールを守らなければならない。自分自身の為にも。


「それじゃ、俺は帰るよ」

「うん、途中までいい?」

「……好きにしろ」



 聖はトコトコとついてくる。

 妙に身長差があるから、聖はまるで子猫のようだった。



「桜庭さんって、リアルは男前だよね」

「……お前な」

「あ、めてるんだよ。イケメンってこと。でも、おっぱいデカイよね」

「う、うるさいな」


 なんの会話なんだか。

 けど確かに、この胸のおかげでVTuberとしての地位を確立した。昔は鬱陶うっとうしくてたまらなかったのに。


 なんで男の子に生まれなかったんだろうと思う。でも、今は女に生まれた事に感謝している。

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