隣の席の銀髪少女

 昼休みになった途端、聖が俺の机の上に乗った。明らかに校則違反な目立つ銀の髪。エメラルドグリーンの瞳を少し不敵に向けてくる。


 顔を近づけてきて、小声でこう言った。


「桜庭さん、VTuberのソロモンでしょ」

「――なっ!」


 心臓が破裂しそうなほどドキッとした。この子、どうして俺がVTuberって知っている。


「その反応、やっぱりね。ていうかね、さっき見えちゃったんだ」

「見えた?」

「うん。教科書で上手く隠していたようだけど、わたしからは見え見えだった。まあ、明らかに不審ふしんだったからね。でも、驚いちゃった。桜庭さんがあのトップVTuberのソロモンだったんて」


 そうだったのか。

 あの時、先生から答えるよう当てたられたし、その隙に見られたのかも。確かにあの時は、ツイッターを開きっぱなしだったから……アカウントを見られてしまったんだ。なんて迂闊うかつ


「だ、だからなに……脅しにでも使う気?」

「それもアリかもね」

「なっ……」


「冗談。これでもわたしね、ソロモンの大ファンなんだ。……ふふ。その顔、意外だったみたいね。女子でもVTuber見ている子多いんだよ」


 ユーチューブのアクセス解析を見ると、男女比50%でバランスは良かった。最近、クラスメイトでも普通に話している女子も多かった。

 でも、隣の席の聖が俺のファンだったなんて微塵みじんも思わなかった。


「要求はなに? お金だったら他をあたって」

「お金とか興味ない。わたしが欲しいものは桜庭さんだけ。興味というか憧れ。だから、お友達になって欲しいの」


 それが聖の要求だった。

 友達。

 俺にそんな存在はいなかった。

 ネットだけが全てだったのに――。

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