修学旅行に出かけた主人公たち。トンネルを抜ければ、濃い霧で覆われた場所に着く。しかし、先にホテルに着いていなければならないはずの、別のクラスのバスがなかった。主人公たちはそれぞれの部屋で、帰ってこない先生の話しをしていた。ところが、主人公だけが何者かによって、殺されてしまう。
悪夢はここから始まった。主人公だけが、殺された記憶を持ったまま生き返るのだ。そして、また殺される。どうして、主人公だけが? どうして決まった時間に? そして、いつまでこのループは続くのか。それを繰り返す度に、主人公は生き残るために必死だ。クラスメイトで妖怪に詳しい男子の協力を得たり、隠れてみたり、他人を利用してみたり、ありとあらゆる手を使って、ループを終わらせようと奔走する。
果たして、主人公はループを終わらせられるのか?
そして、この霧の街を脱出できるのか?
はらはらとする展開の連続で、毎回殺される場面では違った表現がなされる。
是非、御一読下さい。
学年主任が旅費を使い込んだせいで、修学旅行の行き先が端境町という寂れた街となった廻学園の生徒たち。だが、その街は不気味な霧に包まれた人の姿は一切見当たらない。そして生徒の一人、遥香織枝はホテルの外に出ようとしたところを初日の夜に何者かに殺されてしまう!
……のだが、殺されたはずの遥香は気が付けばその日の夕方、街に着く直前のバスの中に戻っていた。そして先ほど訪れた死を回避しようとするもやはり殺されてしまい、そして再び意識はバスの中に戻ってしまう……。そう、本作は何度も死に戻りをさせられるループものなのだ。
生き残るために倉庫に隠れたり、民家に逃げ込んだり、街から逃げようとしたりするもその度に毎回違うやり方で殺されていく。何をやっても延々と殺されていくのも恐ろしいのだが、それと同時に、殺され続けてどんどん遥香の精神が荒廃していく様子が同じくらい恐ろしい。最初は自分だけではなく友達も助けようとした遥香が平気で友人を見捨てるようになり、さらには自分が生き残るために……。
幾たびの死を超えて人の変わりゆく姿を是非リアルタイムで見守ってほしい。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)