第15話 ほころびヲ感じて
「だから前もって言っておく、俺たちの邪魔すんじゃねーぞ、俺は学園なんかすぐに終わらせて、前線にでてーんだ」
「邪魔? 協力するのが、この授業の意義だと思ったが?」
「はっ、んなこと真に受けてるやつなんざ一人もいねーよ、みんな自分が早くフィールドに出て戦果を上げることしか考えてねーんだから」
「……そうか」
(真に受けている一人はここにいるんだがな)
零護が視線に気がつき、必滅の少女を見ると、じっとこちらを見つめていた。
その瞳には勝手に約束していった「零護をつかいまにする」という強い意志が込められている。
「やれやれ、面倒だな」
移動中に茉森に聞いたが、必滅の巫女の話題は全く知らなかった。
どうやら相手側が一方的にライバル視しているらしく、魔女というくらいだから強い護衛役=使い魔が欲しいのだろう程度の結論に落ち着いた。
茉森は負けることが難しいと思うほどの余裕をもっていて、必滅の魔女に友達感覚で手を振っている。
必滅の魔女は「むむむっ」と眉間にしわを寄せて、ささっと他のメンバーの背中に隠れてしまった。
まるでハムスターのような動きである。
「まあよろしく頼む、お互い怪我しないように頑張ろう」
改めて零護が男に挨拶すると、男は「おもしろくねぇ」と呟いてその場を後にした。
春にしては冷たい風が通り過ぎた後、彼らの姿をじっと見つめ零護は口元に手を当てる。
茉森は零護が珍しく心配そうな表情を作ったので、とりわけ明るく声をかけた。
「頑張ろうね、零ちゃん」
「ん、ああ……」
零護の言葉はどうにも歯切れが悪い。
「どうしたの、さっきのやつらが気になる?」
「いや、気にはならない」
「じゃあどうしたの?」
「ここは学園の外なんだよな?」
当たり前の事を零護は茉森に聞いた。
「そうだね、バスで移動してきたけど。新宿とか渋谷とかも通ってきたから落ち着いたら遊びに行きたいよね!」
「そうかマモリは知ってる景色があったんだな」
「それがどうかした?」
「いや、まだ推論の域を出ない。だが、外の『感触』がこれだというのなら、俺は、俺たちは——」
唇を噛んで、零護は再び考え込んだ。
何を考えているのか零護は、そこから口数も少なくなり、茉森も併せて特に喋らなくなった。
数分後、女教師の掛け声とともにプレイヤー候補生たちは、防波堤から次々と跳躍し森化したフィールドの中へと足を踏み入れる。
零護はまだ考え込んでいるようで、一番最後に茉森とフィールドへと足を踏み入れた。
堤防に残ったのは女教師と白衣を着たプレイヤー計測班の科学者たちだけだった。
彼女ガ恋愛脳過ぎて世界ノために戦っている場合じゃあリません ひなの ねね🌸カクヨムコン初参加🌸 @takasekowane
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