2時限目 サバイバルフィールド散策 / 必滅の魔女の襲来

第12話 昼休みの殺人事件

 事件は12:07分に起きていた。

 現場はアメノミハシラ学園の中庭にある木の下。

 

 被害者は乾零護16歳、男性。

 

 男性は容疑者、天音茉森(16歳)の用意した食事に手を伸ばして数分後に気を失ったとみられている。


 用意された弁当の中身は白米、唐揚げ、ほうれん草、ハンバーグ、コロッケと一般的な食品で構成されていた。


「……匂いにも味にもおかしなところはなかったんですけどね」


 後に目を覚ました被害者は地面を見つめながらそう語りました。


 容疑者は「おかずがなんか生焼けだったし、色味も悪かったので、覚えたてのバッファーのスキル【ポイント強化】を零ちゃんの視覚的センスの強化に試してみたんだよね」などと語っております。


【ポイント強化】

・狙ったパラメーターを2段階アップさせる。

・1分が経過すると強化効果が切れ、その後、30秒間は1段階の弱体効果が入る。


 原因は視覚的センスが高まったことで零護の目に食事は美味しそうに見えて、本来ならば未熟な食事もフルコースのディナーセットに見えたのでしょう。


 実際の食事の見た目や味に変化がなかった為、実際の<食事効果>が零護の身に影響したと専門家(茉森)は推測しています。


「続いては明日の天気です。明日も小春日和が続き、」

 

「ま、まて茉森……ニュース風にしてごまかすんじゃない!」


「零ちゃん、無事だったんだね!」


「今後は人が倒れたからといって、『これやっちゃったなー』って舌だした後に、ニュースレポート風にごまかすのはやめなさい」


 まるでお母さんのように零護は言って、ふらふらと立ち上がり、再び座り直した。

 修行後に殺されそうになったのは初めての経験だったし、幼馴染に殺されそうになったのも初めてだ。


「ご、ごめん、零ちゃん。気が動転しちゃって……頑張ったんだけど、お肉も生だし、冷凍食品もカチカチだから……無理して食べなくてもいいよ……」


「何、言ってんだよ」


 そう言って零護は再び箸を持っておかずに手を伸ばす。


「一生懸命、作ったんだろ」


 唐揚げを摘まみ口の中に放り込む。

 確かに生焼けだ。血の味が口の中に広がる。


 コロッケやハンバーグは解凍されていないので、氷を食べているような食感だった。


「さっきは一気に押し寄せてきたから驚いただけだ。よく考えたら名もなき流派を学ぶ時の修業中は、山の中で一人で生き抜くことも多々あったからな」


 弁当箱のご飯は炊かれていなかった。

 もうこれは炊かれる前のお米が直接、弁当箱に流し込まれているだけだ。


(さすがにほうれん草は間違えられないだろう……)


 やれやれと思い、肩を落としている茉森を見つつ、箸でつまんだほうれん草を口の中に放り込み——すぐさま茉森に見つからないように口から出して、握りつぶす。


(——トリカブトだわ)


 トリカブトは日本三大有毒植物の一つ。

 食後20分以内にしびれが始まり、嘔吐や呼吸不全、痙攣をおこす。


(茉森は味がまずくて倒れたと推測しているようだが、俺はトリカブトに当たって倒れたのか……)


 流石の零護もトリカブト耐性はまだ備えていないので、茉森が悲しまないようにそっとこの世界からほうれん草のように料理されたトリカブトを抹消した。


「ごちそうさん、次からは俺が作ってくるから気にするなよ」


「零ちゃん……」


(妙な野草での不意打ちは師匠だけで十分だしな)


 名もなき流派で無人島で過ごした日々を思い出し、頭を振って悪夢を拭い去る。

 空は何処までも高く、春風も心地よい。


 本当にこの世界がフィールド化という現象により、モンスターに街が壊滅されている非常事態とは思えない日和だった。


「零ちゃん、そういえば次の授業、早くもフィールド化による1日サバイバル訓練だけど知ってた?」


 あっけらかんと話す茉森を見て、零護は食事だけは絶対に自分が担当しようと心に決めた。


──────あとがき──────

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いつかレビューがもらえたら嬉しいなと思いつつ、次回のお話も頑張ります。

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