第8話 素手の攻撃力
「ならやるしかない」
レベル差がどれほどフィールド内で関係するのか、零護には理解しがたい部分ではあるが茉森がいるのだ。
巫女を護衛する任務どうこうではなく、再開した幼馴染として怪我をさせたくない。
「マモリ、俺の背中から顔を出すなよ」
「う、うん」
ヨダレをたらしながら狼が零護の周囲を歩き出す。
その数は十二匹。
(狼のボスを潰せば倒せるとはよく言うが、実際のところ、これほど唾液を垂らしていれば、関係なく襲い掛かってくる——ならば)
零護が小さく息を吐いた瞬間に、狼たちも一斉に飛び掛かってくる。
狙いは零護と茉森の脚、次に首を狙う狼たちが波状攻撃のように二段回で飛びかかっていくのが見える。
「——手数で勝負だ」
一秒間に放たれた拳は二四回。
そのどれもが狼の頭部を爆散させ、姿かたちをこの世界から消し去っている。
あまりにも呆気ない。
「は、はわわ」
想像以上の破壊力に背中で見ていた茉森すらも驚嘆の声を上げている。
これには零護自身も驚いていた。
自身の身体能力は正確に把握していたはずだが、まさか相手がこんなにも脆いなんて。
これではレベルで敵との戦力差を表示してくれている意味がまるでないんじゃないかと零護は思った。
「こいつら倒されると消えるのか」
狼たちの肉片は風にさらわれるように、さらさらとその場から消え去っていく。
消え去ったのを確認してか、MMOデバイスからなんとも場違いなファンファーレが鳴り響いた。
「あ、レベル上がったって」
嬉しそうな声で茉森が自分のステータスを見る。
「この数字上がるの好きだなぁ、なんか楽しい」
茉森はにへへと笑って、ステータス画面をじっと見つめている。
「良かったな、マモリ」
緩んだ顔で喜んでいる茉森を見るのは嬉しい。
小学校の時に戻ったようで、零護もなんだか嬉しくなり自分のステータスを確認する。
しかしレベルは8に上がっていたものの、ステータスはエラー表示のままだった。
(やっぱり故障してるのか、フィールドを出たら早いところ表示を直してもらおう)
「零ちゃんがいれば怖いものなしだね、さ、次にごーごー!」
両腕を大きく振って歩き出す茉森を見て、子供の頃に二人で冒険した水路を思い出しながら、零護も茉森の後を追う。
「あんまりはしゃぐと昔みたいに池に落ちるぞ」
苦笑しているうちにバチャンという音が聞こえるまで、数秒とかからなかった。
────────────────あとがき──────────────────
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
初めてのラブコメなので、参考までに「★」「応援」「コメント」をいただけると、とっても嬉しいです。
いつかレビューがもらえたら嬉しいなと思いつつ、次回のお話も頑張ります。
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