先輩と私の

数日後の昼休み、その先輩が私のクラスに来た。

先輩は誰かを探しているみたいだった。クラスの子達は色めきだって先輩に群がっていく中で私はお弁当を親友の瑠衣と食べていた。

「悠貴先輩が来るなんて珍しいね。もしかして茉莉のこと探してるんじゃない? お礼するって言ってたんでしょう?」

「あんなの社交辞令に決まってんじゃん。私のこと探して訳では無いと思うよ。連絡先も知らないし……」

「確かに! 連絡先知ってたらクラスメイトに羨ましがられそうだもんね。あっ! 先輩こっちに来るよ?」

「えぇ! そんな訳ないでしょ」

「そんな訳あるから。久しぶり。茉莉ちゃん」

先輩がそういった瞬間クラスメイト達が私のところに一斉に集まってきて質問攻めにしようとしたところを先輩が止めた。

「だめだよ、みんな。茉莉と俺は秘密の関係だから」

「は?」

思わずそんな声が漏れてしまい瑠衣に呆れ顔をさせてしまった。

「酷いな! あんた。俺あんたの苗字知らないから他のクラスの奴にも聞いてやっとここに辿り着いたのに……秘密の関係って言った時の反応がまさかあんな反応をされるとは」

「揶揄うのやめてもらってもいいですか?」

「 冷たいなお前」

先輩がそういうと瑠衣が慌ててこういった。

「ああ、これがこの子の通常運転なんで気にしなくていいですよ? こう他人と一線を引いているというかあまり親しくない人とは一切関わろうとしないというか」

その言葉を少し先輩は考えていたが答えを出せたようで顔が明るくなった。

「なるほど。わかった。つまり俺が茉莉と仲良くなればなんの問題ないんだな?」

そう問いかけてきたので私が何を言ってるんだこの人はと思っていると先輩は1人で納得したようでこう宣言した。

「よし! 茉莉! これから仲良くなってみせるから覚悟しとけよ。忘れるところだった……今日の放課後上手いパフェの店に連れてってやるからそれがこの前の礼ってことで。逃げんなよ?」

と言うと先輩は1人満足したのか唖然としている私を残して悠々と自分の教室へ帰って行った。その後質問攻めを受けたのは言うまでもない。質問に全部答える前に先生が入ってきて授業が始まったが、私は授業に集中できなかった。集中は出来なかったけど何とかノートだけは取り後で瑠衣に教えてもらおうと思った。その後帰りのHRがありついに放課後になってしまった。結局、瑠衣とは下駄箱までしか一緒に帰れなかった。下駄箱で上履きから靴に履き替えていると先輩がやってきたから。先輩は私を見るとぱっと顔を輝かせ近づいてきた。本当は瑠衣と一緒に帰りたかったのだけど先輩に捕まってしまい私は瑠衣とは一緒に帰れなかった。瑠衣に助けを求めたけど……助けてくれなくて。私は先輩に引きづられるようにしてそのお店に連れていかれた。連れていかれる前に

瑠衣が何かを私に言っていたけど先輩の声にかき消されて私には何を言っていたかは分からなかった。


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