第7話

 先述の通り、やがて私には世界というものが、ひとという生き物が分かるようになってきた。そうして初めて、彼ら私の家族がふつうのひとではないことに気がついた。

 絶対者たる神であるからこそ気づきえなかったことだが、彼らが私にやってきたことは、ふつうのひとの親はしないような考え方や、教え方であったことであったことが徐々に私にも見えてきた。そして彼らの振る舞いがふつうのものでないと知った上でなお、私の立場からは……彼らは神、反抗の許されざる畏怖の対象であることを認識できるようになってきた。ふつうのひとでなく、強大かつ正しい存在。それが私から見ての彼らであった。ふつうでない振る舞いであったとしても、彼らは常に正しかった。何故なら彼らは神だからだ。間違うはずもないのだ。例えば、そのとき既に私にとって眼鏡は体の一部であり、それなしでは困ることが多々あったのだが、たまの帰省の度に私は彼らの前で眼鏡をかけないよう努めていた。彼らの言うように、本来は眼鏡などに頼るべきでないのだから。勝手知ったる実家では読書のほかにすることがないから、裸眼でもさほど困ることはなかった。


 そして進級の度に、レンズは分厚さを増していった。厚みの分だけ、眼鏡は重みを増していった。

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