第十話 ツリーの前で

『河井さん……考えごとかな?』


お店を出てから河井さんは神妙な顔をして歩いている。


「どうしたの?」


僕は河井さんの顔を見ながら言った。


「え?!な……なにが!?」


河井さんはすこし焦ったような様子だった。


「ちょっと神妙な顔してたから何か考え事かな~って」


僕は何かしたかと内心ドキドキしている。


「ううん何でもないよ」


河井さんは首を横に振って僕にに笑顔を向けた。


僕はその笑顔が可愛くて直視することが出来なかった。慌てて上を見上げて


「そっか、ならいいんだ。ここイルミネーションすごいきれいだね」


と話題を反らした。河井さんも目線を上げて


「うん!こんなにきれいだなんて思ってなかった。一人で見に来るのはちょっと気が引けてたから佐藤くんが誘ってくれたから見れた景色だよ」


と言ってまた僕に顔を向けた。僕は自然と笑顔になって言葉が出てきた。


「そんなに喜んでくれるなんて嬉しいな」


僕がそう言うと河井さんはまた俯いた。


キラキラと光るライトが河井さんの顔を照らして少し紅く見えた。


だんだんと駅前に近づいてきて、人の通りも増えてきた。


駅前の時計はもう7時を指している。高校生の僕たちにとってはそこそこ良い時間だ。


クリスマスツリーを見上げる河井さんを横目に僕は覚悟を決めた。


クリスマスツリーの前にはたくさんの人がいる。雑踏の中僕は声を出す。


「河井さん」

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