第九話 並木道
『佐藤くんが予約してくれたレストランの料理、すっごくおいしかったなぁ』
私はキラキラと輝く道を歩きながらそんなことを考えてた。
『佐藤くんは気にしないでって言ってたけど今度何かで埋め合わせしなくちゃ』
私は心のなかで意気込んだ。
「どうしたの?」
佐藤くんが私の顔を見ながら言った。
「え?!な……なにが!?」
私は心のなかを覗かれたようで少し焦った。
「ちょっと神妙な顔してたから何か考え事かな~って」
佐藤くんは微笑みながら私の顔を見た。
「ううん何でもないよ」
私は首を横に振って佐藤くんに笑顔を向けた。
「そっか、ならいいんだ。ここイルミネーションすごいきれいだね」
佐藤くんは私から目線を逸らし上を見た。私もつられて上を向いた。
並木道にたくさんの電灯がついていてキラキラと光っている。中央に流れる小さな川の水に光が反射して、より一層輝いている。
「うん!こんなにきれいだなんて思ってなかった。一人で見に来るのはちょっと気が引けてたから佐藤くんが誘ってくれたから見れた景色だよ」
私が佐藤くんの顔に視線を移して言うと佐藤くんは嬉しそうな顔をしていた。
「そんなに喜んでくれるなんて嬉しいな」
佐藤くんは笑顔になって言った。不意に向けられた笑顔に私はまた胸を高鳴らせた。
佐藤くんが笑顔になるたびに私の気持ちはどんどん高まっていく。
『こんなにドキドキしてる……私、今日最後までちゃんとしてられるかな』
心臓の音が体中に響く。
いつもと同じ、だけど少し違う緊張が私を包み込む。この緊張はなんだか心地よくて気持ちいい。
『今日、告白されなかったら私から……』
手に持ったカバンをギュッと握りしめた。
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