第七話 クリスマスの飾りつけ

「え?!」


私が電車を降りると隣の車両から佐藤くんも一緒に降りてきた。


私たちは顔を見合わせ、佐藤くんも驚いた表情をしていた。


「佐藤くん、どうしたの?まだ集合時間より全然前だよ」


「そういう河井さんこそこんなに早くに」


私たちは同じことを思っていたようだった。


「ふふっ、考えること、おんなじみたいだね」


佐藤くんは笑顔でそう言った。


「とりあえず外行こうか」


佐藤くんは外を指さして私の手を引こうと手を差し出したように見えたけど、その手はすぐに引っ込められた。


手、握ってくれないのかと少し残念だったけど、佐藤くんとイルミネーションを見に来れただけで嬉しかった。


「うん!」


私は頷いて佐藤くんの後ろについて行った。


駅前はイルミネーション目当ての人で溢れかえっていた。


「どうしよう……まだ時間は早いしな」


佐藤くんは腕時計を見ながら小さな声で言った。


「佐藤くん、どうしたの?」


私が心配そうに聞くと佐藤くんは


「いや、ちょっとレストランを予約してたんだけど、僕たち早く来すぎちゃったからまだ空いてないかもしれないんだ」


佐藤くんは真剣にどうしようか悩んでいた。悩んでる顔もかっこいいなと見惚れていたがそんなことを考えてる場合じゃない。


私は佐藤くんにこんな案を出した。


「えっと……じゃあさ、ちょっと遠回りして行こうよ。知らない町を歩くのって楽しそうじゃない?」


それを聞いた佐藤くんは頷き


「うん!そうしよう!ありがとう河井さん!」


と笑顔になって言った。


私たちはメインの通りから少しずれて軽く飾りつけがされている横道を歩いた。


「駅前の道、凄い人だったね」


佐藤くんは少し歩いて人がまばらになったときに言った。


「そうだね~。やっぱりクリスマスだからかな?」


私ははそう返した。二人きりになると恥ずかしくて自分からは話しかけられない。沈黙が続く。民家に飾りつけされたイルミネーションがキラキラと光っている。


だいぶ歩いた頃にメインの道に戻ってきた。


すると佐藤くんが口を開いた。


「ここだ。河井さんが提案してくれたおかげで時間ぴったりだ」


さっきまでの気まずい時間が佐藤くんの一言で嘘みたいに吹き飛んだ。

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