第四話 教室の中

僕は河井さんとの通話を切った。


「びっくりした〜。河井さんから電話なんて……声、震えてなかったかな?」


僕は携帯を手に持ちながら呟いた。


「でもちゃんと日曜日誘えて良かった〜。電話で断られてたらさすがに平常心じゃいられなかったな」


さっきのやり取りを思い出していたら頬が緩んできた。


「河井さん、電話越しの声も可愛かったな」


僕は画面を見つめながら河井さんのことを想った。


「あれ?そういえば僕、河井さんにおやすみって言ったっけ?こういうのって電話終わるときに言ったほうがいいんだよな」


河井さんとの電話の緊張から解き放たれ、あとは寝るだけの体制だった僕は思考力が低下し、少女漫画で得たあやふやな知識を何故か思い出した。


「電話をかけ直す?いや、さすがにそれはない。lienで送ればいいかな」


ギリギリ保っていた理性で河井さんにメッセージを送った。


翌日の放課後


「河井さん。日曜日なんだけど6時に柏尾駅前で待ちあわせでもいいかな」


僕は隣の席で荷物をまとめている河井さんに笑顔で話しかけた。


「うん!あそこのイルミネーション、きれいって有名だから一回見に行きたかったの!誘ってくれてありがとう」


河井さんは可愛らしい笑顔を僕に向けながら言った。その顔を見た僕の心臓の音が体中に響く。河井さんにも聞こえてるんじゃないかと思うと、さらに音が大きくなる。


「じゃあ日曜日に」


僕はなんとか冷静を保ちつつ河井さんにそう言った。


「うん!凄い楽しみ!またね!」


河井さんはそう言って教室を出た。


僕は河井さんが教室を出るのを見送ったあと椅子に座り込んだ。


「河井さん、可愛すぎるよ〜〜。何?あの笑顔!天使か!!それに凄い楽しみって言ってたし、これはもうチャンスだと思っていいよな。よし、日曜日絶対告白するぞ!」


僕は一人残った教室の中で決意を口にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る