第三話 初めての電話

ピコン

私がお風呂上りに髪を乾かしていると携帯がなった。


「なんだろう?」


私は机の上に置いておいた携帯を手に持って電源を付け、画面を見ると佐藤くんからだった。


[今週の日曜日空いてますか?もしよければ駅前のイルミネーション一緒に観に行きませんか?]


「……え?えぇ?!ちょ……ちょっとまって!佐藤くんが!?どどど……どうしよう」


私は佐藤くんから来たLeinを見て落ち着きが無くなり部屋をウロウロと歩き始めた。


「そうだ、既読付いちゃったから早く返さないと!え〜と、え〜っと、なんて返せばいいかな。普通に?……普通って何?!」


そんなことを考えていると時間はどんどん過ぎていく。


「どうしよう、どうしよう……あっ!」


画面の上で指を動かしていたら間違って電話のボタンを押してしまった。


「あぁぁ、まってまって!ちがうちがう!えっとどうやって戻すんだっけ?」


「も、もしもし?河井さん?」


キャンセルボタンを押す前に佐藤くんが電話に出てしまった。


『あぁ〜〜どうしよう!!佐藤くん、電話に出ちゃった!えっと……何て言えばいいかな?ていうかいきなり電話なんて迷惑かけちゃってるんじゃ……』


「河井さん?大丈夫?」


電話の向こうから佐藤君の声が聞こえて私はハッとした。


「う……うん。えっとごめんね。いきなり電話なんてかけて」


私は冷静を保ちながら話していたが声が少し震えていた。


「い……いや全然」


佐藤くんの声も少し震えているような気がした。


少しの間沈黙が続いた。


『話すことなんて考えてなかったから全然話が続かない……どうしよう、間違ってかけちゃっただけなのにこんなことになるなんて……。そうだ!間違っちゃったことを正直に言えばいいんだ!』


私は考えたことを話そうと口を開いたとき


「あ……あのさ、さっき送ったんだけど日曜日って予定空いてるかな?」


と佐藤くんが話した。


「う……うん。特に予定はないよ」


私がそう言うと佐藤くんが話を続けた。


「じゃあさ、駅前でやるイルミネーション一緒に観に行かない?ダメだったらいいんだ!河井さんがもしよければでいいんだけど……」


そう言われて私は考える間もなく


「い……行く!行きたい!」


と答えた。


「良かった~。じゃあ詳しい時間とかはまた明日でもいい?」


佐藤くんが私に聞いてきた。これ以上電話を続けると持たないと思った私は佐藤くんの提案に乗った。


「うん。いいよ。明日学校でね」


と私が言うと佐藤くんも


「うん、じゃあまた明日」


と言った。私は佐藤くんが電話を切ってくれるのを待ったが一向に切れる気配がない。佐藤くんが電話を切り忘れているのかと思って私は電話を切ることを佐藤君に言おうと名前を呼ぶ


「佐藤くん」

「河井さん」


すると佐藤くんも私の名前を呼んだ。向こうも私が電話を切るのを待っていたようだった。


「あはは……河井さんも僕が切るの待ってたんだね」


電話の向こうで佐藤君が笑った。


「フフッ、うん。佐藤くんもまってたんだね」


つられて私も笑っていた。


「じゃあ僕の方で切るよ。また明日ね、河井さん」


「うん。また明日」


私が言葉を最後まで言ったのを確認して佐藤くんは電話を切った。


「ふぅ……緊張した~。でも日曜日に佐藤くんと……えへへうれしいな」


私はベットに飛び込んでそのまま寝てしまった。


ピコン

[言い忘れてた、河井さん。おやすみなさい]


その文字が薄暗い部屋に輝く携帯の画面に映っていた。

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