第13話 永遠の盟約
「ほんとう?どういう方法なの?」
「まあ、簡単に言えば、勇者にしてやるんだ」
「勇者だって?」
勇者とは人間の力を超越した存在で、かつての善悪戦争が終わった後に生まれたと伝えられている存在である。
勇者ができた後、魔人族に滅びの危機に瀕した人族もある程度の勢力を維持できるようになった。
勇者という存在は、神から祝福を受けた存在、つまり神が直接祝福さえ与えれば誰でも勇者になれるということを意味した。
「うん、勇者になれば、サトネさんも十分に私たちの役に立つはずだよ」
「でも、そういう事なら、たくさんの人間を勇士にすればいいんじゃないの?」
「そうではあるが、君の持つ神聖魔力では一人もやっとじゃないか」
「あ、勇者を作るには神聖な魔力がかなり必要なんだね」
「そうだ。 どうするの?」
フジヒロはじっくり悩んだ。
「まあ、とりあえず今日はサトネとこれ以上話すのは無理だと思うから、明日もっと話そう」
「そうしよう。それじゃ、私たちも部屋に入ろう」
「あれ?私たち一緒に寝るの?」
「しょうがないじゃん。 もともとサトネと寝かしつけるつもりだったのに喧嘩したせいで」
ルナはさっき二人を部屋に残したとき、下りて隣の部屋を借りた。
だが、サトネとフジヒロがけんかしたせいで、フジヒロの寝所がなくなってしまった。
「そりゃしょうがないよ」
「アポロン、ちなみにお前は床で寝ないと」
「それはちょっとひどすぎるんじゃない? それにもともと男だろ」
「でも今は女で、サトネちゃんが見たら本当に喜ぶと思う」
「ああ、そうだろう…」
藤弘は納得して部屋に入った。
夜が明けて、フジヒロは早く起き上がり、となりの部屋の里の方へ行った。
フジヒロはドアをたたいた。
「サトネ、起きた?
もし起きたらドアをちょっと開けてくれる?
話したいことがあるんだ」
門前は静かだった。
フジヒロはため息をついて部屋に帰ろうとするときにドアが開いた。
「入ってこい」
門を開いたサトネの姿からいかに泣いたかが予想できた。
「それで、何が言いたいの?」
と部屋にはいってきたフジヒロに、サトネが聞いてみた。
「私と一緒に冒険に出たい?」
フジヒロの問いにサトネは答えなかった。
「サトネ」
フジヒロがサトネの目を見つめるとサトネの目に涙がにじむのを見た。
「いっしょに行きたい」
サトネが涙を流して言った。
「危ないかもしれないのに」
「うん、危なくても」
フジヒロはサトネを抱きしめて言った。
「じゃ俺の勇者になってくれる?」
「勇者だって?」
サトネが涙をぬぐいながら言った。
「うん、勇者になれば人間でも強い力を出せるんだって。
そして神様が人間を勇者にしてあげることができるらしい」
「やる!絶対やる!」
サトネが一瞬のためらいもなく答えた。
「二人は仲直りしたようだね」
ルナは彼らの後ろでじっと見ていた。
「ルナ、もうやり方を教えてくれ」
「わかった。まず、神聖魔法の使い方自体は非常に簡単だよ」
「創造命令というフォーマットで命令したいことを思い浮かべれば、自動的に注文が作られるんだ」
「だからただ創造命令だと叫べば、私に必要なことが自動的に行われると思えばいいんだろう?」
「うん、その通りだ。じゃあ、すぐやってみよう」
「わかった。サトネ、準備できた?」
「うん、いつでもいいよ」
「それではする。
創造命令:
黄金色の光が現われて、サトネをかばい始めた。
「サトネ、大丈夫?」
フジヒロはサトネが心配で呼んでみた。
だが、サトネにフジヒロの声が届かなかったのか、何の返事もなかった。
数分経っても黄金色の光が消えないので、フジヒロが心配してルナを見つめた。
「アポローン、たぶん大丈夫だ。
知っているだろうが、君は人間を殺せない存在だ」
ルナの言葉に少しは安心したようだった。
光が消え、空中に浮かんでいたサトネがゆっくり降りてきて、フジヒロがサトネを受け取った。
サトネの体からは、熱がおびただしく出ていた。
「すごく熱っぽいけど、本当に大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。勇者になるっていうのは、体をほぼ新しく組みなおさないといけない作業だから、体から熱がたくさん出るしかない」
フジヒロはサトネが心配でサトネのそばで見守り続けた。
夜になったとき、サトネは目を覚ました。
サトネが普通の人間から勇者の身になるまでに、十二時間もかかったわけだ。
サトネの隣には、自分を見ていて疲れて眠りについたフジヒロがいた。
「アポロン、目を開けて!」
サトネがフジヒロを揺り起こした。
フジヒロがびっくりしながらサトネを見つめた。
「サトネ、大丈夫?」
「うん、体から力が溢れていると思う」
サトネは自分の筋肉を自慢してフジヒロにさわってみろと言った。
実際にサトネの筋肉量はもともと彼女が持っていた筋肉量の10倍に増えている状態だった。
また魔力量も以前の50倍に増加していた。
「あれ?サトネ、起きたね。 それでは今日は一旦ゆっくり休んで明日からすぐ冒険に出るようにしよう。 去る前に私たちのこれからの予定を教えてあげる。
だから今日は早く寝るように!」
ルナが無事に目を覚ましたサトネを見て、明日の予定を話してあげた。
日が昇り始め、サトネとフジヒロは慌ただしく出掛ける準備をした。
ついに彼らの冒険の始まりを知らせるのだった。
「みんな荷物は全部持って行ったんだろう?」
先に旅館に下りていたルナが彼らを迎えた。
「うん、全部準備したよ。 もう出発さえすればいい」
「よし。じゃあ、私たちの今後の計画を話してあげよう」
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