第12話 時空を超越した再会
「ルナさん、あの人は誰ですか」
彼女の怖がる様子が彼に見えた。
「それは、私が言いたいことなの。 どうしたの?」
彼女も当惑して少女を見つめた。
「理由は簡単だね」
少女は理由を説明せず彼に鏡を見せるだけだった。
鏡に映った自分の姿を見た彼は、すぐ納得することができた。
現在の自分の姿は以前とはかなり変わっていたからだ。
「サトネさん、この方がフジヒロさんです」
「フジヒロ?どうして?」
彼女は生まれて初めて会った人が自分の人生で最も愛する人だという話を聞くと、頭の中がごちゃごちゃになってきた。
彼女は髪をつかんで体の力を抜いて転びようとした。
転びかけた彼女を彼は素早く走り去り支えてくれた。
「大丈夫?サトネ」
確かに彼女が見ている顔は彼女の記憶の中の顔ではなかった。
しかし、なぜかそれと重なって見えた。
「ほんとうに、フジヒロ?」
彼女は彼を見つめながら言った。
「ほんとうに フジヒロだよ。 久しぶりだね」
彼女は涙を浮かべ始め、彼の胸にぎゅっと抱かれた。
彼女が大声で泣き叫ぶと、彼もまた涙を流して彼女を抱きしめた。
「大丈夫」
彼は彼女をもっと強く抱きしめた。
「さあ、それでは久しぶりの再会の時間を少し与えよう」
少女は彼と彼女が久しぶりの再会を果たすためにドアを閉めて立ち去った。
彼は生きている彼女の顔を見ると心の奥にあった暗鬱さがすべて飛んでいくのを感じた。
「ところで、なぜ姿が変わったの?」
サトネがフジヒロに聞いてみた。
「ああ、それはね」
フジヒロはサトネにこれまであったことをすべて知らせた。
フジヒロにすべての話を聞いたサトネは笑い出した。
「神があんなに嫌いだと言っていたフジヒロが神だなんて、本当に皮肉だね」
サトネの言葉に、フジヒロも照れくさそうに笑った。
「そうね」
「本当にこんなふうにまた会えるなんて、信じられない」
サトネがまた泣きながら言った。
「サトネ、もう泣くなよ。 もう私たちはずっと一緒にいることができる。
私が世の中のすべてを犠牲にしてでも、あなたを守ってあげる」
フジヒロの言葉を聞いたサトネは、恥ずかしがってうつむいた。
だが、サトネの赤くなった顔は、うつむいてもフジヒロに見えていた。
「それでも世界のすべてを犠牲にしなければならないなら、世界を守ってくれ」
サトネが照れくさそうに言った。
「いやだ。絶対お前を守る」
「うそ」
サトネが恥ずかしくてフジヒロの言うことをあえて否定した。
「ほんとだ!」
フジヒロが笑いながらサトネの目を眺めた。
フジヒロと目が合ったサトネは気まずい顔をした。
そうして部屋の空気も気まずくなってきた。
サトネが目をつぶって、フジヒロとサトネは久しぶりのキスを交わした。
このような雰囲気が分からないのか、ドアが開いてルナが入ってきた。
「あっ、タイミングを間違えた。
また行くよ」
ルナが外へ出ようとすると、フジヒロとサトネは顔を赤らめて言った。
「大丈夫だよ. いてもいいよ」
「あ、そう? じゃあ言うよ。
アポロン、正直に言うと僕たちに時間があまり残っていないんだ。
神界の変化がいつ界にも影響を及ぼすか分からない状況で、一日も早く状況を落ち着かせなければならない」
ルナが不安そうな様子でフジヒロを急かした。
「アポロン?」
サトネちゃんの知らない名前で、ルナがフジヒロを呼ぶと、疑問をあらわにした。
「ああ、それが私の神名前だ」
「本当?じゃあ、私もこれから神名前で呼ぶよ」
サトネがフジヒロの新しい名前について知ると、気に入って言った。
「わかった。したいようにしろ」
サトネが、自分の新しい名前を気に入っていることに気づいたフジヒロは、あまり反対せず、すぐに受け入れた。
「アポローン、明日すぐに出発しよう」
「うん、わかった。 サトネはこの村に残っている」
フジヒロはサトネの安全のためにサトネを村に残らせるつもりだった。
「どういう意味だ?
私も一緒について行くよ。 もう別れるのは嫌だ!」
サトネがフジヒロの言うことを聞くと反対して言った。
「私も一緒にいたいが、今後、わたしたちが進む道がどれだけ危険な道になるかは、誰も断言できない。
しかもお前は人間だから弱いじゃないか」
「私が邪魔にならないように武術も習って魔法も習うよ。
私もあなたの力になってあげるから、どうか一緒に行こう」
サトネが哀願してフジヒロに言った。
「ごめん、だめ」
しかし、サトネの安全がもっと重要だったフジヒロはきっぱり断った。
フジヒロの断りにサトネは涙を見せた。
「フジヒロ いや アポロン 憎い! 私の部屋から出て行ってくれ!」
サトネが悲しそうに泣き怒った。
「サトネ!」
感情を持て余すサトネをフジヒロは鎮めようとした。
「出て行け!」
サトネの声に、フジヒロは今は自分が何もしてあげられないことがわかった。
結局、フジヒロは部屋から出て行った。
「明日また来るよ」
ドアが閉まって、サトネの泣き声がドアのそとからもきこえてきた。
「結局、けんかしてしまった」
状況を見守っていたルナが残念そうに話した。
「仕方がないだろう。 一緒にいることよりサトネさんの安全が私にとってもっと大事だ。
こんな危険なことを一緒にさせるわけにはいかない」
サトネが怒る姿を見たフジヒロは、しょんぼりした顔をした。
「何も理解できないわけではない。 じゃ、サトネちゃんが強くなったら一緒に行かせてくれる?」
ルナが意味深長な質問をフジヒロにした。
「まぁ、強くて安全を心配するほどでなければ、そんなこともあるだろう。
何か方法でもあるの?」
ルナの質問にフジヒロが興味を持つとルナが答えた。
「当然だ!」
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