第10話 秘密の呪文
「僕はキミじゃないから、キミの正確な気持ちは解らないかも知れない。
でもきっと、僕たちは同じような世界の崩壊を体験してる。」
僕は泣きすぎて息が苦しくなりながら、
ずっと、いつかジョーに話そうと思っていた事を話すことにした。
「キミはもう忘れてしまったみたいだけど、
キミの世界では、あれは些細な日常だったのかも知れないけれど、
キミと初めて会ったのは、このそばの川沿いの公園だよ。
夜で、
僕は小3で、ブランコに座って泣いていた。
その時、
僕の世界は崩壊していて、
今のキミとじゃ比べ物にならない崩壊かもだけど、
あの時の僕にとっては、本当に世界の終わりで、
フェンスを越えて川に飛び込もうって思ってたんだ。
でもさ、僕、スイミングやってて泳げるんだよ。
だから、ブランコに座って泣いてるしかなかったんだ。」
ジョーは僕の胸元に顔をうずめながら、涙を堪える様に、
僕の話を聞いてくれた。
「バカな野郎だな…あ、そん時ゃガキか。」
「うん、そう。
僕、バカなガキだった。」
僕たちは、お互い泣きやむのに息を飲んで何度も喉を鳴らし、
鼻を
呼吸を整えるのに、胸で息をして、
「何となく思い出した。
…猫、鳴いてただろ?
俺、最初、お前がその声出してる幽霊だと思ったんだ。」
「どっちがバカなガキだよ?」
「俺だ、認める。
でもさ、だから俺、お前が仲間だと思ったんだ。
俺みたいに1人で泣いてて…
俺みたいな偽物じゃない本物の幽霊ってマジにいるんだなって。
お前、色白じゃん?
なんかあちこちに赤いのついてたし、いかにも子供の幽霊でさ、
本物の幽霊なら友達になれるかなってさ。」
ジョーもまた、その生い立ちから、ずっとボッチだったのだ。
僕たち2人は、お互い遠い目をして話していたと思う。
「ジョー。
今考えると、あれは世界の終わりじゃなかったんだ。
僕は結局、施設に行ったけど、
あの時から、僕だけの世界が始まったんだ。
キミのお母さんの秘密の呪文は、
本当に効いたんんだよ。」
僕はジョーの両頬を両手で包んで、額にキスして呪文を唱えた。
「チチンプイプイ。これでもう何でも大丈夫!」
僕は、ずっと伝えたかったことを僕なりになんとか上手く彼に言えた事で、また泣きそうになっていた。
「少し気分良くなった?呪文、きっとまた効くよ。」
ジョーもまた泣きそうになっていて、目を閉じて頷くと、涙が
ジョーが急に僕の脇から背中に手を回し、僕を強く抱き寄せてから
「しばらく、こうしてて。」
僕もジョーを抱きしめて、背中をさすってあげた。
そうしてるうち、僕の首元にあったジョーの唇が、いつしか僕の首筋を這うようなキスになった。
多分僕たちはお互いに、心の底から話をして、感情が高ぶっていたんだと思う。
それに多分、お互い同じ世界の崩壊を共有して、
お互い孤独だって解って、寂しくて、
僕らはお互いにあの日と今日の崩壊の中の幽霊だった。
ジョーが僕のシャツの下から背中に手を入れ、僕も彼にそうして、
僕たちはお互いのシャツを脱がせて、
触りたいと思ったところを触り、
キスしたいと思ったところにキスしあった。
僕らは泣いてた時と似た荒い息で、
お互いの胸が高鳴った呼吸で上下するのを感じながら、
長い長いキスをした。
ジョーの腕が、僕の体をまさぐる様に抱きしめて、
こんな事をするのは初めてだった僕は、気が遠くなりそうで、限界だった。
僕はジョーの体重と、
後ろに重ねて畳まれてある2組の布団の間に押しつぶされ、
お互いの肺から空気を奪う様にキスしていた。
僕たちはこっそりズボンを履き替え、僕の部屋に行って洗わなきゃいけない。
情熱の波が過ぎるまで、僕たちは胸と胸を重ねていた。
「俺、お前がいれば…大丈夫だと思う。」
僕は急な眠気に落ちる前、
ジョーが荒い息を整えながら、僕の目を見つめた後、
僕の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます