第5話 ジョーはジョー

「おい、イッチ!俺の服とか作業着どこだよ?」


クジラのぬいぐるみを枕にして、

小さいブランケットに包まって床に寝ていた僕は、

ジョーの容赦ない蹴りで起こされた。


酔った彼の世話をし、寝床まで提供した僕への、彼が最初にした行動がソレだ。


でも僕は彼が泣いた姿を見た後では怒れなかった。


というより、寝ぼけながらも、


《コイツ頭のネジがブッ飛んでる!》


と、強く認識していたので、不思議な行動じゃ無く思えていた。


「あ、超絶くさかったから洗った。ついでにリュックの中の他のも洗っといた。」


「はぁ?俺、仕事行けねーじゃん!7時からなのに!」


怒っているジョーの後ろの壁の時計はまだ朝の6時だった。


「全自動だからもう乾燥も終わってるはずだよ。見てみて。」


「すっげー!」


ジョーはもういつもの無遠慮なジョーで、

嬉々として洗濯機から自分の服を取り出して、作業着に着替えると、

あとの服はリュックに詰めていた。


「着てたスウェット、

僕には大きすぎるから、キミにあげる。」


「なんだよ、イッチ!お前んち、何気に金持ちかよ!」


「違うよ。全部寄付。僕、施設育ちだからね。」


ジョーは動きを止めると、僕の方に来て、僕の肩を2回パンパンと叩いた。


「大丈夫、大丈夫!」


大抵の人は、僕が施設育ちと言うと、謝罪かあわれみの言葉を返してくる。


でもジョーのジョー過ぎる返答に、僕は何だか笑えてきて微笑んだ。


「じゃ、俺行くから!あ、メッセとか寄こせよ!俺、暇な時は暇なんだよ!」


ジョーはバタバタと出て行った。


ついでに言えば、

出際に冷蔵庫から勝手にジュースのペットボトルを取り出して飲み、

僕の朝食用のパンをくわえながら出て行った。


もっと言えば、

誰だって暇な時に暇なのは当たり前で、問題はそれがいつなのかを伝える事だ。


ジョーはやっぱりジョーだった。



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