30ページ,見ることの出来ない教本
「さあ、早速行くよ」
あまりの切り替えの早さに内心引きつきつつも、私はケルのお母さんに付いていく。
何度も夢見た屋敷の中になんの抵抗も無く入る。入り浸るような扉の数々を抜けていき、一つだけ離れた雰囲気の違う扉の前に立つ。
一瞬にしてここだ、と直感する。
キリキリと胃が痛む感覚を覚える。お腹の部分を擦り、ドアを引く。
真ん中には
早く親の元へ帰りたい、その原動力が足を、体を動かし、聖法陣の目の前に立った。
横を見ると当たり前のようにケルが立っていて。それが安心できるような、嬉しいような。
不意に、手がなにかを包まれる。見れば、私の手を、ケルが包み込んでくれていた。でも、理由がわからなくて。だから「どうして手を?」と聞いた。
すると、ケルは体の方から下から上に向けて頬が紅潮した。
そのままそっぽを向き「この方が効率がいいから……」と、ボソッと呟いた。なんで、そんなそっぽを向いて言うんだろう、と思いつつも、効率がいいのなら、とケルの手を思いっきり繋いだ。
ケルの顔はさらに赤がみがかり、硬直した。
突如、真ん中の聖法陣が光りだし、それに合わせ周りの聖法陣も光り輝いていった。
異動する感覚が、聖力を流れ出てくる感覚が。聖力が心身を一体になる感覚がくる。
やがて、見えるはずもない扉が私を通り過ぎ、また新たな扉がでてくるも、それは閉じていた。
しかし、蒼白い聖力の粒子が扉を
一瞬でここが私の世界とわかった。直感だけど。
急な眩暈がして、自分の体が離れてく感覚がする。でも、ケルと繋いでいた手は離さなかったし、ちゃんと感覚があった。
***
───時が遡り、トイツァラン帝国───
「では、よろしくな」
にこやかに微笑み、話を聞いていた二人はシュンと、どこかへ消え、そこには空虚が残った。
一人は15年前に使役し、もう一人は少し前に【勇者】を見つけたため、使役させた。
どうして、この二人を王国へ行かせたかというと、あの"奴"の存在だ。少し前、
聖法は奴の内部の内部、魂の元、『
「来い」
そう短く
「なにか用?」
あからさまの嫌な顔に俺は若干機嫌を悪くする。これは仕事だ。嫌な顔をせずにキチッとやったらどうなんだ。
「せっかく、お前を生き返らせたというのに。なんだその仕草だ」「あーはいはい、わかったから、はやく用件だけ言って」
俺は舌打ちを打つも、用件を言う。
「お前は───」
***
───説明後───
「わかった、じゃあ準備してくる」
女は俺を一瞥し、部屋から出ていく。俺も、この暗い部屋から早く出ていこう。
───私は、
***
───同時刻、キャル宅ガイラズの部屋───
どうも。久しぶりのクーです。いやさ、もう何話ぶりよ。最近、ケルとキャルのケルキャルカップルがイチャコラしやがって。あとケルの性格変わったーとか設定変わったーとか、ほざく奴もいると思うけどアイツは見栄を張ってるだけなんだよ。
逆に言えば、最初に出てきたケルが本心のケルだ。本当は誰かに甘えたくて、楽に生きていくことを望んでいる。
普通の『本』だったらケルの苦悩を吹っ飛ばす展開とかがあるのだろうか。でも、これは私の物語だ。
私が主人公で、私が物語を作っているのだ。
文句を言われる気はさらさらない。
さて、愚痴を言い終わったところで本題に入ろうか。
結局、腕時計のことは強行突破して開けたが、どれも計画についてなどのことで、決定打な情報はなかった。
そして、あの後、キャルパパのことを調べたが、どうやら、明確な理由はなさそうだった。
でも、資料を見るに、誰かに指示をされて動いていたような……
今のところは、よくわからない。資料には<法>はかけておらず不用心だったため難なく読めた。
───これ以外は。
チラリと横に目をやる。そこに映し出されるは、一冊の古びた教本。
教本を手に持つと、そこに聖力を流し込む。ビリッと刺激が手を襲ったみたいだ。
自分は、痛みなどの刺激を無効化させる〈状態異常感覚無効〉とその刺激を吸収して自分の全ステータスを回復させる〈状態異常感覚吸収〉があるため、こういった類のものは一切として通じない。
刺激がきたという直感だけはあるがな。
とはいえ、これでただただ<力>を流し込んだだけでは開かないことはわかった。
普通だったらこれで開くはずなんだけどなあ……どんだけ用心深いんだよ。
次に私は<法>を使うことにした。『
結果としては、ダメであった。
結構、用心深い。鑑定をしても、めぼしい情報しかなかった。
でもさらに解析を進めると、どうやら何かの暗号で解くことがわかった。
その暗号がなんなのかというのはわからない。ほんっとに、なんでわからないの?
そこはわかろうよ、これ以上グダグダさせると僕も読者さんも困るというのに。
でもそんなことを思っても状況はなにも変わらない。変われない。
ではそこで僕はなにをしたでしょう?
正解は……強行突破だ!今度、ケルに使おうと思っていた聖法、『
折角、ケルの為に使おうと思ったがこんなところで初使用することになるとは……
さあ、では早速……
『───助けてくれ!』
なんだ?なにか思念が送られてきた。この思念は覇気を用いた方法だ。
……仕方ない、本を読むのは後だ。今はこの覇気の出どころを調べよう。
至る所に覇気を飛ばし、ひっかかった所が出どころとなるが……これは。
どうやら、さっきの思念が流れたところは、
今朝、キャルが向かったところだ。そして、覇気を飛ばした人物は、ケル。
<
すぐに、向かわないといけない。確か……キャルのパパがそこへ同行していたからな。
いそいで行かないと。
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