23ページ,攻略済みのラビリンス
───数刻前、【永久の
私は、とある日の事を思い出していた。
なにを隠そう、フレアとのことだ。今朝、夢を見ていたからだろう。仲の良かった、私の妹といっても過言ではない幼馴染。
───いつものように元気になれなかった。最近は、よかったのに。これじゃあ、また逆戻りだよ……
目頭に溜まりつつある雨を拭き取る。
「大丈夫か?」
そんな私の姿を見た父が心配する。そんなに心配してないくせに。
実は、あの後お父さんと
いつも、私一人だけだったのに今朝、いきなり「今日は私も
「うん、大丈夫」
力のない笑顔で返す。父はやっぱり「そうか」と、ある意味、期待を裏切らない返答をした。
私とお父さんの関係はあんまりよくはない。ある日、フレアが死んだあの日からお父さんは人が変わったように、私とだけあまり話さなくなったし、関係を薄めてきた。
いや、よく見たら、癖も少しだけ変わっているように見えた。
そこまで大きな癖の変化はないが、日常の一部分を切り取ると前と少しだけ変わっていた。
私のせいなのかな? 私だけが生きていたからフレアの御家族になにか言われたのか? そんなこと何度も何度も考えたが、もう昔のことだ。
コツ、コツ、と
ちなみに、
ここは
「そうだ、お父さん。あの話してよ。
昔からよく聞いていたお話だ。最近は聞くことが無くなったが、今は昔を思い出したかったのか無意識に言ってしまった。
「うん? そんなことをいうなんて珍しいな。でも、いいぞ、お父さん優しいからな」
お父さんは噓つきだ。こうやって、私から踏み込もうとしても、すぐに離れて同じ距離感を保ち続ける。 ……そう、お父さんから違和感を感じるようになったあの時から、全てが崩れ去る音がしていたのだ。
そして、お父さんが今からするお話は、童話や物語ではなくてただの解説だ。
私はその話が気にいっていた。最近はまるっきり聞くことはなくなったけど。
「──この星には
静かに、父の声が周りの岩にこだましたかのように響く。
「その内、
「その機能は未だ解明されてないんだよね?」
「ああ、そうだ。そして、ここの
本来、『
「また、ここには地下100どころではないく、更に下の<奈落>というのが続いている。<奈落>は他の
この
「研究者がこの
ダンジョン、とは一線を画すラビリンス。それはこの迷宮が他とは違うという意味も込められている。
「───これで十分か?」
「うん、久しぶりにその話聞けた」
久しぶりに父の話を聞いて、懐かしさがこみあげてくる。だが、その思いも一瞬にして切り替え、心を鬼にする。
目の前にいる
ただ、これを続けてきた。何年もの間。だから
───しばらく進み、私たちは十階の
ギギギと扉の軋む音が鳴り開かれる。
───刹那。私は真正面にいる
「よくやった。キャル、自己最高速度だ」
お父さんには、ここにくるまでの時間を計ってもらっている。前の自己ベストを教えこうやって伝えてもらっている。
「お父さん、先、行くよ」
「ああ」
私は止めに離れている魔物の生首を
───さらに時が進み、私たちは四十階のボス部屋に着いていた。
「はあ……はあ……はあ」
自身ですらその異様とも言えるスピードに体が付いていけず、私は息を切らしていた。
「急ぎすぎだ。確かにここまで着くのが早かったが、それでも、おまえが大丈夫でなければ本末転倒だ」
お父さんの言っている通り、私は急いでいる。慌てている。だけど、私は急がなければいけない理由があるんだ。
「もっと、早く、強くならなきゃいけないんだよ……!」
息を荒げているがそのことなんか関係なしに重い扉を開ける。
そこにいるのは
「よくここまで鍛えられたものだ」
「ありがとう」
ここまでは余裕だ。問題は、ここから。次にいこう。
次の階へ行っても、ただひたすらにモンスターを倒していく。そして、無我夢中へ進み、気づけば七十階まで足を進めていた。
「よ、ようやく……」
「いや、今日はここまでにしよう。流石にもうお前は限界を超えている」
そんなつもりはない、そう言おうといたが意識が
足がもたつき壁にもたれかかる。瞬間、壁に埋もれている鉱石が光り輝き、私の真下にある床が───消えた。
「えええぇぇぇぇえええええええええ‼‼‼‼‼‼??????」
落ちて、落ちて、落ちる。最初は明るかった穴も今はどんどん深淵に暗くなっていっている。
「くっ!」
なんとか落下を止まらせようとするがスピードは穴に進むたびに早くなっていっている。
だが、このままいけば、いつかは床に到達する。そのときは運動エネルギーによってバラバラにされてしまうだろう。
「『
急いで聖法を使い自分を浮かせようとする。だが、この落下スピードだとすぐには調和されないだろう。聖力もガンガンと削られていく。
「!?」
目線の先には地面が映された。さらに聖法陣に聖力を注ぎ込み自分を浮かせようとする。そうして私と地面がくっつかれようとするその瞬間に私は浮いた。だけど、私が浮いているのはようやく聖法陣が間に合ったのではなく、他人の聖法陣によって私は浮いていた。
「『
静謐でとても綺麗な声が聞こえた。声がした方に私は目をやる。そこにいたのは真っ白な服を着た可憐な美少女だった。そして、クーによく似ていた。
瓜二つなほどに。
「大丈夫? 落ちたみたいだけど」
彼女は私に白く、温かい手を差し出す。私はその手を握手するように握り、立ち直す。
私はここが<奈落>だということが本能的でわかり、もっともらしい質問を冷静に彼女へと尋ねる。
「貴方は、『
私の問いに少女はすぐに答える。
「いいえ。もう倒した」
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