番外編,ベルゼブブの行方(以下略

「ここは……」


 これは、ベルゼブブが、クライシスの〈スキル〉になった後の話。


「我は、スキルとなり、魂諸共砕け散った筈……?」


 そう状況をすぐさま把握し、疑問点を挙げる。そして、体はあると確認し、『完全浮翔操作ディスパレス』にて飛び立つ。それにより、辺りを俯瞰して見渡す。


 そこは、真っ暗な空間であった。上も下もよく分からなく、一度飛び上がってしまえばここが何処か分からなくなるくらいに。


 先程、<法>を使えたため、この空間にマナが満ちているのは確実。ということは、〈スキル〉が使えることも確実。


 そう考えたベルゼブブは、持ち前のスキルである〈表森羅万象把握デグラエズベル〉を使用する。


 そうすることによって、表沙汰にされている事象を把握できる。このスキルは、<世界の管理者>を真似しており、下位互換となっているスキル。


 だが、それでも強力なスキルであり、ベルゼブブは役立ったことも多いスキルであった。


『この空間は、個体名ネアメル・ヴァデレードが用意したものであり、輪廻冥界領域を模したところである。しかし、模してあるのは機能だけであり、外観は模していない』


 ベルゼブブは、その説明を受けてネアメル・ヴァデレードという単語に疑問を呈したが、〈表森羅万象把握デグラエズベル〉が反応することはなかった。


 どうやら、これ以上表沙汰にされているものはないとベルゼブブは判断した。

 すると、突如、ベルゼブブの頭の中に声が鳴り響く。


『ようこそ、わ■……の♪▼★───」


 それは、カセットテープのような掠れた声で聞こえた。音源は、どこにも無く、しかしベルゼブブには意味がなんとなく聞き取れた。


 それを、繰り返し言葉にして発した。


「"ようこそ、わたしの空間へ。詳しい説明は頭の片隅に置いとくから───"か」


 ベルゼブブは目を瞑り頭を捻りだし、思い出す。そこには、あの時の契約内容が移りだされている。


 しかし、そこにはあの時の契約内容とはまた違ってくるように思えた。確かに、契約内容には、謎の余白があったが、そこにムズムズと文字が浮かび上がる。


「これは……」

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