6ページ,勇者という”存在”
───夕刻、冒険者ギルド退出後、ラーゼ・クライシス?───
いやーちょっと冷や汗掻いた。あまりにも手加減をしすぎた。だからFランクとかになるんだよ。
でも結果オーライかな? これでなんとかクエストが受けられる。
ほんのすこしだけ文句を言うなら、パーティーを組まなきゃよかったことだけだ。だけど、それは守らなきゃいけない奴が一人増えたということ。それは手間だが、鍛えておけばいいだろうか。
でも、そのパーティーメンバーも見る限り強いやつだ。鍛えれば光る原石でもある。
足手まといにはならないだろう。
そういえば、ギルドマスターってキャルメルさんのお父さんだっけか。何故か親子なのに距離感が感じられるのは、この世界では普通なんだろうか?
……にしても、勢いで冒険者ギルドをでてしまったが、この後なにをするか決めてなかった。
……そうだな。もっと詳しくこの王都を観光するか。
そう考えが付き、私はまた歩を進める。地面はよく舗装されている。こうしている間にも<
立て並ぶビルみたいな建物。宙に浮いている公園。一定間隔に空いて植えてある木々。そして、随分と楽しそうな人々。こう見てみると、まるで自分も笑顔になってしまう。
でも、そんな王都の中に一際目立つものがある。あの山だ。都市の端っこに位置する場所にあるあの山。王都の景観にそぐわないわけではないが、明らかに人の目につく。
あの山に近づいて歩いてみると、その山に祈る奴がチラチラいる。
その人たちの服装も見てみてもどうやら、信徒みたいだ。あの山が御神体なのか?
気になったので、『
白い淡い光が自分の周りを包み、景色のいい場所へ転移する。
転移すると、そこには横たわって、景色を眺めている人がいた。
僕は黙ってそいつの横に座った。改めて景色を見ると、やっぱりいい景色だ。
俺は横にいるソイツに話しかけた。
「この景色が好きなのか?」
「ああ。なんだかここは妙に惹かれるんだ」
私も分かる気がする。ここは妙に落ち着く。パワースポットと言われる場所があると言われるが、ここはそうなのだろう。
「奇遇だな」
相槌を打つ。
「もしかして君も?」
相手は背的に十代なのに上から目線に話を言う。
「なんだかこの景色に目が惹かれてな」
「不思議だよね」
この間、コイツと僕は初対面だ。そんな不思議な偶然に、私は一つ質問をした。
「名前は?」
「ケーラ。苗字はないよ」
「そうか」
ということはスラム生まれか。
平民や貴族、王族などは全員苗字を持つ。だが、スラム生まれは別だ。スラムは苗字を捨てるという独自の風習をもつ。正確に言えば、スラムの土地には昔、タッタッラー族という民族が住んでいた。
その民族は、戦争をよくしていたため、戦争に勝つために強さを求めた。人は道具と思わせ、家族の絆というものを捨てた。だから、今でもその風習が続いているスラムの土地では、生まれた時から苗字を捨てる。
元々、苗字を知っているというのに、それを捨てるとは興味深いことだ。
だが、何故か不思議だ。
スラムは通常、金がない奴が行く。だがこいつは見てみるにだいぶ、力をもっている。
コイツなら冒険者などで食っていけるだろう。まあ、金に興味がないのならこうなるがな。
「君の名前は?」
「……今はラグエズと呼んでくれ」
ここで偽名を使った理由は俺はケーラが信用に値しないからだ。コイツとは妙に気が合う。だが、それもなにか催眠系の<
探りをいれてみよう。
「ここでなにをやっていた?」
「ただ景色を見てただけだよ」
「ほんとにか?」
こいつが、なにかを隠してるような。そんな気がする。〈スキル〉を使って何をするのか分からせればいいが、少々俺的にはそういう暴き方は苦手だ。
「探ってるみたいだね」
「当たり前だ」
「そのスキルを使えばいいんじゃない?」
……驚いた。まさか俺のステータスを見れるなんて。
いや、でも見えるのは断面的なものだろう。俺が一番隠していることは隠しきっているはずだ。
……もういいか。さっさと〈スキル〉で覗こう。
そして俺は、〈スキル〉を発動させる。
ケーラの力もスキルもどちらも規格外だったが、それを裏付けるものを見つけた。
*
[クラス]勇者
*
[クラス]というのは生き物の位のことだ。生き物に生態系のピラミッド構図があるように種の一つ一つにも[クラス]といわれるピラミッドの構図がある。そして人族という一つのピラミッド構図で一番上なのが、勇者なのである。ピラミッド構図が上であればあるほど、ステータスは一般よりも大きい。
そして、《勇者》は、魔族の一番上のクラス、《魔王》と同じ千年に一回現れる逸材だ。そのため普段は国を挙げて勇者を支援するはずなんだが。はたして。
「お前はこれを知っていたのか?」
「君には何が見えたんだい?」
なにも知らないのか?
だとしたらありのままのことを伝えるとしよう。
「お前の[クラス]が勇者だった」
俺がそういうとケーラは目を真ん丸にした。しかしどこか納得したような顔をした。
「そういうことか」
「なにがだ?」
純粋な疑問をぶつける。
「僕は、君の知っている通りスラムにいちゃいけないぐらいの力をもっている。だが、僕はスラム出身だから教会にもいってない。だからステータスを確認するなんて、できないんだよ。しかも僕はめんどくさがりだ。目立つなんてことはできない。昔から、この力のことは知ってたんだけどね……まさか勇者だなんて」
教会はステータスを開示させてくれる場所だ。でも正直、俺はあの場所が嫌いだ。
あそこは、全部、プラス思考すぎる。神の思し召し、神の思し召しうるせえんだよ。神はそんなに都合がよくない。
だがまあ、あいつらの信仰している、神?は嫌いじゃない。
しかしやっぱりあいつらのやり方は気に入らない。
「どうやらその口ぶりだと勇者だと知らなかったみたいだな」
「もちろんさ。そんな凄い人だなんて」
「っは。自画自賛かよ」
「ふふっ」
「ははっ」
気づけば辺りは黄金色に染まっていた。こういう景色も悪くない。
「そら。もう、日が暮れてきた。お前もそろそろスラムに戻ったらどうだ?」
「そうするよ。……ねえ」
ケーラがなにか尋ねてきた。
「なんだ?」
「明日は用事があって無理だけど、明後日は……またここにこれる?君と一度戦ってみたいんだ」
「奇遇だな。俺も明日、用事があるんだ。だが明後日はフリーだ。戦うとするか」
ケーラはニコッと笑い、俺も笑顔で返したつもりだ。だが、笑えているのかよく分からない。
俺は立ち上がり、ケーラも立ち上がった。
「『
「ラグエズがここに来た時に使ってた聖法だよね。さっき見たから使えるよ」
見ただけで聖法を覚えるのか。なかなかだな。
「じゃあ帰れるな?使ってみろ」
「うん。わかった。そのまま帰っていいかな?」
『
「もちろんだ。じゃあな」
「うん。じゃあね」
『
<
なかなか凄いやつだった。流石は勇者といったところか。
さて、俺は野宿でもするか。
ちゃんとテントも用意する。
『
「《トアノレス》〚複製〛〚
といい、テントをだす。さて、今日はここで一晩を過ごすとするか。
もちろん体洗いとかはトアノレスの服だから不要だ。
俺の体的に食料もいらないけど食は楽しみたいじゃん?
さて、後は……
「《
私の半径6サレルに鳥かごのような領域が生まれる。この空間は特別であり、あらゆることが僕にとって有利にまわる。
これで、情報を集める。ありとあらゆるこの国の情報が、糸を引き僕の元へと集う。これでアイツのことでも探るか……
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