第50話 ごめんなさい
大の大人が5人ケニアの部屋の扉の前に立っている。誰がノックをするのか。大体こういう時にはルーベンスが先陣を切るのだが、ルーベンスの前に何故かランドルフが立ち塞いでいた。
ルーベンスが声で、
「ノックをしないのでしたら、どいて頂けますか?」
と耳打ちすると、ランドルフはいきなりノックをして返答を貰う前にドアを開けてしまった。流石に全員がドン引いてしまった。
((((いやいや、返答待ちましょうよ。))))
「ここ数日嫌な思いをさせてしまってごめんね。」
ランドルフは、笑顔をケニアに向けたが、その笑顔を見たケニアは眉間に深い皺を作った。
(ごめんねって。軽くない?)
心の声が表情に表れていた。その表情を見た四人はケニアの心情を慮って頷いている。
「ケニア。申し訳なかった。説明が後になって。ケニアを裏切ることは、僕は絶対にしないから。って、しまって嫌な思いをさせてしまったね。これから説明をさせて貰っても良いかな?」
ケニアの顔を覗き込むようにルーベンスが話すと、少し顔を赤らめてケニアは頷いた。
「昨日は簡単に言うと、エメ嬢とダンヒル子爵が押しかけてきて、ケニアに慰謝料を請求すると始まったんだ。」
ケニアは、言われていることが理解出来ずに呆然としてしまった。自分が慰謝料を請求するなら理解は出来るが、二年間ケニアが働いたお金で豪遊していた人たちが何故慰謝料請求出来るのか。どう考えても解らなかった。
「うん。ケニアが何を考えているのか僕にはわかる。というよりも皆が解っている。あり得ないからね。だから、ケニアも向こうを訴えるよ。弁護士は僕がやるから安心して。証拠はこの二年で十分に集まっているからね。何なら元夫に対しても請求しちゃう?」
ルーベンスは、ランドルフに顔を向けた。
「ランドルフ様は結構です。」
ケニアが俯き加減に発すると、ランドルフは、ケニアが自分に好意を向けてくれたと喜ぶが、
「面倒だから。お義父様からの勉強代を支払っていたと思えば良いもの。」
と後から付け足されて、項垂れた
「でもエメ嬢はダメ。絶対にダメ。」
「うん・・・・・そうだよね。」
ルーベンスは、ケニアが階段から突き落とされた時の事を思い出した。
「そして、ランドルフ殿の元恋人のモニカと同じ愛人だったラビィには暗殺依頼がされている。これは偽装しようと思う。その為には、王宮にも協力をして貰わなければいけないから、今日は王宮にも行かなければならない。」
「エメ様とラビィ様はお友達ではないのですか?」
「モニカとラビィは、今は邪魔な存在だよ。ランドルフ殿の子供がいると公言しているエメ嬢の発言を覆すことが出来るのはこの二人だから。」
ケニアは、ランドルフを横目で見た。
「ランドルフ殿は、エメ嬢ともラビィ嬢とも男女の関係にはなかったんだ。夜は各部屋でランドルフ殿は部屋に鍵をかけて就寝していたから。そしてエメ嬢のお腹の子の父親は全く違う相手だよ。それを証言できるのはこの二人だ。消されては、証言をして貰えなくなる。」
ケニアは証人を消すという発想に驚愕した体を小さく震わせている。
「ケニアは僕が守るから大丈夫だよ。」
ルーベンスは震えるケニアに近づいて体ごと抱きしめた。ヴィヴィ達はルーベンスに抱きしめられて、顔を紅くしているケニアに微笑んでいる。
「そういう事なら、許して差し上げます。」
顔を赤らめながら、微笑尾膨らませて顔を横にするケニアが可愛くて、ルーベンスは髪にキスを落とした。
ランドルフは一連の流れを見て
「ズルくない?」
と不満を漏らした。
「長年の付き合いですからね、」
ルーベンスはランドルフを見ずにケニアに視線を落としたまま答えた。
ケニアの許しを得た5人はそれぞれの今日の役割を確認してからケニアの部屋を後にした。
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