第48話 暗殺ギルド2
暗殺ギルドが何処にあるのか解らないナナは、路地裏をキョロキョロと見ながら、探していた。酔っ払いに絡まれたり、不審者扱いをされて衛兵に声を掛けられもしたが、
暗殺ギルドを探している
とは言えないので、のらりくらりと躱しながら、探していた。
もう少し裏通りの方が良いのかと思い奥へと進んで行くと、明るく照らされている酒場を見つけた。
(こういう所に居たりするらしいけど。)
ナナは、恐る恐る店内へと入って行った。
給仕には若い女の子が短いスカートをはいて接客をしていた。別席のような場所があり、そこには、高価そうなソファセットがあり、身なりの良い男性達が生地の薄い短いドレスを纏った女性を侍らせている。
(ここはどんなお店なのかしら?)
ナナは慣れない店の中をキョロキョロと見渡していた。ナナを見つけた黒い服装の男性が傍に寄って来た。
「どなたかをお探しですか?」
ナナは、折角声をかけてくれたのだからこの人に聞いてみようと思ったが、流石に暗殺という不穏なワードを口にすることは憚ったので
「ギルドに依頼をしたくて、信頼できるギルドを探しているのですが、何分不慣れなもので、こういったところで縁を繋げられるかと。探しに来たんです。」
「成程。良かったですよ。当店は善良なギルドをたまたまご紹介出来そうです。此方へいらして下さい。」
黒服の店員はナナを奥へと案内した。部屋までは迷路のようになっていて、とても一人では辿り着ける気がしなかった。奥の部屋へ通されると、ソファに掛けて待つように指示をされた。少しすると、先程フロアに居た短いスカートをはいた女性がオレンジジュースを出してくれた。ナナは目を見て会釈をすると、女性も笑顔で会釈を返してくれた。
オレンジジュースを半分飲んだところで身なりの良い男性が入って来た。顔にはウサギのお面を付けているが、整えられている髪などから、貴族位の方ではないか?と推察していた。
「初めまして。ギルドにはどのようなご用件で。」
一人掛けの向かいのソファに腰かけたウサギのお面の男性が声を掛けて来た。
ナナはダンヒル子爵の手紙を渡して、その後皮の巾着袋をテーブルに置いた。
「手紙の内容は見て貰えば解ると主が申しておりました。その前金がこちらになります。」
ナナは巾着袋に手を向けた。
「成功した暁には、残金を直ぐにお支払いするそうです。」
ウサギのお面の男性は手紙を読み終えるとナナを凝視していた。
「何か問題がありましたか?」
「君の主はダンヒル子爵で間違いない?」
「あっ、手紙にお名前を記されていらっしゃったのですね。知らずに失礼いたしました。その通りで御座います。」
「解った。引き受けるよ。ダンヒル子爵には、問題ない。全て任せる様にと伝えてくれる?」
「はい。良かった。こんなこと初めてなので、どうすれば良いのか解らなくて。お嬢様の為によろしくお願い致します。」
「お客様をお送りして。屋敷までしっかりとね。女性に何かあっては困るからね。」
ナナは、ウサギのお面の男性のやさしさに頬を染めながら会釈をして、傍にいた男性に付き添われて部屋を後にした。
「それで、今回の依頼はどういった内容ですか?」
「あぁ、モニカとラビィの殺害だ。良く考えるよね。今日は気分が悪くて此処に気晴らしに来ていて良かったよ。もし他に行かれて暗殺ギルドを紹介なんかされたら、証人を殺されてしまう所だった。なんだか今日は運が良いみたいだ。」
「流石ですね。」
「暗殺ギルドへ圧を掛けておいてくれる?ダンヒル子爵の依頼を受けたギルドは潰すって。」
「おおぉ怖っ。あなたの大切な人へと繋がる事であると、鬼のようですね。」
「辞めてくれる?僕は紳士なんだから。さて、帰ってケニアの顔でも見てから寝ようかな。」
ウサギのお面を外したルーベンスはケニアの顔を思い浮かべて微笑んでいる。
「何でウサギのお面をつけるんですか?」
「あぁ、幼い頃にケニアが僕にウサギのお面を付けて似合うって喜んだからだよ。」
極上の笑顔を見せたルーベンスはそのまま部屋を後にした。
「そのウサギのお面を付けた人が本当は誰よりも恐ろしくて、こんなお面が似合わない人だなんて、決して思っていないんだろうな。お嬢様は。」
そう言ってギルドの副長ファズはルーベンスのうさぎのお面を手に部屋を後にした。
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