第43話 裁判します3
ランドルフが押しかけて来た翌朝、やはり当たり前の様にランドルフは食堂に居た。
ケニアは態と視線を逸らした。
全員が席に着くと、ルーベンスが、給仕係を手で制した。ケニアは不思議そうにルーベンスに視線を送る。
「ケニア。君の屋敷なのに、事後承諾になって申し訳ないが、ランドルフ殿を暫くこの屋敷の客室に住まわせる事になった。実は、ランドルフ殿は、今濡れ衣を着せられている。昨日ケニアも聞いたエメ嬢の子供の事だが、エメ嬢の子供はランドルフ殿の子供ではなく、誰の子供か解らない。多分下級騎士だと思うけど。」
ケニアは朝の回らない頭をフル活動しようと思ったが、上手く動いてはくれなかった。
「待って、ちょっと待って。何故エメ様とランドルフ様は一緒に暮らしていたのに、子供が余所の方のお子様なのですか?」
「僕は、自分の部屋に鍵をかけて眠っていて、エメともラビィともベッドを共にしたことは一度もないからね。父上に絶対にするなと言われていたし。」
「あぁお義父様からの指示ですか。成程。」
「あれ?僕信用されていないのかな?」
「信用出来るほど、仲良くなったことはありませんから。」ケニアに一蹴されて、ランドルフは苦笑する。
「濡れ衣を証明して、ダンヒル子爵家をオルゲーニ家から追い出さなければいけない。忘れているかも知れないけれど、あそこにはまだ庭師がいる。」
「ビルじい。懐かしいな。元気かな。」
「元気だよ。この前怒られたよ。」
ケニアは一緒に薔薇の世話をした時のビルを思い出す。とてもかわいがってくれて、手製のハーブティやローズティを休憩の時に淹れてくれた。とても繊細で誰にもまねが出来ない逸品だった。
「ビルじい虐められていないかしら。」
階段から何の躊躇もなく突き落とされたことをケニアは思い出した。
「だから、裁判をしてオルゲーニ邸を一日も早く奪還する。そのためにはランドルフ殿との打ち合わせもしなければいけないから、ランドルフ殿を客間において欲しい。」
「そういう事ならば、問題ありませんわ。お兄様早くに終わらせて下さいね。」
「誰に言って居るの?ケニア。絶対に負けないよ。見ていて欲しい。」
「勿論ですわ。応援しております。頑張って下さい。」
ケニアはルーベンスに笑顔を向けた。その笑顔を見てルーベンスは給仕係に指示を出した。
「あのぉ僕の応援もしてくれるのかな?」
ランドルフが、少しの期待を胸にケニアに問いかけると、ケニアは聞こえない振りをした。
大体こうなった原因はランドルフにある。応援なんかする筈がない。ふんと小さく鼻を鳴らした。
「今日の予定のすり合わせをしようか。ランドルフ殿の予定も加味しながら、裁判の準備も進めたい。」
ルーベンスの言葉に、ケニアの予定から、順に時間を合わせて行った。朝食を取りながら話は進み、一日のタイムスケジュールが出来上がった。
「それでは皆様。今日も宜しくお願いいたします。」
ケニアの言葉に食事を終えた皆は徐々に席を立ち仕事へと向かっていった。
この後に嵐が来るとは思いも寄らずに。
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