第20話 終了のデビュタント3

アンゲルはデビュタント会場へ向かう国王と宰相と王太子を見つけると駆け寄り、行動に対しての無礼を先に詫びてから、


「オルゲーニ公爵家当主マティスが危篤状態になりました。医師からは今晩が山だと告げられております。至急お知らせをと思いご無礼を承知で御前にまかり越した次第です。」


国王は、一度目を閉じて天を見上げてから、視線をアンゲルに移して


「相分かった。報告ご苦労であった。また今後の報告を待っている。」


と告げて会場へと向かっていった。アンゲルは、国王の背を見送ってから、駆け出して行った。そのやり取りを壁に背を付けて隠れながら聞いていた人物、エメはニヤリと嫌な笑みを浮かべてから、ケニアから奪ったドレスを翻して会場へと戻って行った。


☆☆☆


デビュタント会場で、友人達と語らい合っていたランドルフの傍に愛らしい姿で駆け寄るエメは会場で目立つ存在だった。非常識にもデビュタントを四年も前に過ぎた女性が、デビュタント用のドレスで、しかもデビュタントの誰よりも目立つ高価なドレスに身を包んでいた為に。


エメはランドルフの腕にしがみ付いて


「私、皆が睨んでくるから、ちょっと着替えて来る。こんな扱いを受けるとは思わなかったわ。」


と言い始めた。流石のランドルフも、


(それは当たり前では。)


と思いながらも口にはしないで、エメを慰めるように頬に手を当てて、


「気を付けて行っておいで。」


と見送った。会場を駆け抜けて行ったエメは、王城から抜け出して、馬車に乗り込み、行き先をオルゲーニ公爵邸へと指示をして、ランドルフを置き去りにしてオルゲーニ邸へと急いだ。

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