第12話 入籍前
翌日、ルーベンスがケニアと一緒に公爵邸に赴き、カナガン伯爵家の意向を書面して渡した。
「メイドと侍女は了解した。しかし。ルーベンス君は受け入れる事は出来ない。ケニアは我が家へ遊びに来るわけではない。嫁に来るのだ。その嫁に未婚の男性。しかも従兄弟が付いて来るなんて。了承出来る訳がない。」
ルーベンスは片側の口角を上げてニヤリと笑んだ。
「では、もし今後そちらのご子息ランドルフ殿が三回、本来なら一回でも許し難いのですが,三回ケニアの名誉を傷つけることがあった場合には、私はケニアの執事として参ります。その時には、否は受け付けませんが如何でしょうか?」
マティスが考えたが、一回ならランドルフはやらかす可能性があるが、三回は流石に無いだろうと踏み了承をした。
「あぁ、ランドルフ殿の彼女たちがしでかしても同じですよ。」
これもマティスは結婚をすれば、彼女達とはさすがに縁を切るだろう。もし切る気がなくても絶対に別れさせなければならない。と考えた。結果こちらも了承をして契約書を交わした。
「ごめんなさい。お兄様。嫌な思いをさせてしまったわ。」
「そんなことは無いよ。僕は彼らよりも、余程ランドルフ・オルゲーニを知っているようだと確信したよ。暫く待って居てね。」
ルーベンスは、ケニアに微笑んで帰って行った。
ケニアはルーベンスの『暫く待って居て。』の意味が解らなくて、首を傾げてルーベンスを見送った。
それからは怒涛の一か月となった。身内だけの結婚式とは言え、ウェデングドレスやそれに付随するアクセサリーも必要となり、デザイナーを公爵邸に呼び寄せて、意匠を提示させて、公爵家の全員が総意のドレスを仕立てた。ケニアは、勿体ないと直ぐに却下をしようとするので後半は、公爵家の女性使用人だけではなく、ケニアのメイドであるサリーとルーナそして侍女のシンシアまで加わった。
その間はケニアは公爵の仕事の手伝いをしながら、投資の勉強に力を入れていた。
そして、漸く波瀾の結婚式の当日を迎える事となった。
☆☆☆
公爵家から届いた手紙を開封したまま乱雑にテーブルに置いていた為に、ランドルフがシャワーを浴びているときに、部屋に入って来た、彼女の一人であるエメが開いて手紙を読んでいた。
ランドルフの結婚式の内容が記載されていた。当日は遅れることがないように前日には公爵家で就寝をすること。数日中にセカンドハウスを片付けて、屋敷へ戻り、仕事を少しずつ学んでいく事。今付き合っている女性たちとは結婚式までにはきちんと別れていること。それらが出来ないときには廃嫡をすること。公爵家からは今後女性たちには一切お金は出さないこと。これらが事細かく五歳児にも解るように記載されていた。
「どういうことよ。」
エメはピンクブロンドの愛らしい髪色とエメラルドの大きな瞳で愛らしく社交界では男性達から愛らしい見た目からエメドールと呼ばれていた。
扉が開いて、腰にタオルを巻いて、下半身を隠し上半身は、裸のランドールが水滴を髪から垂らしたままタオルで拭いながらやって来た。
「やあエメ。今日も可愛いね。どうしたの?こんなに早く。」
どうしたも、こうしたもない。社交界では最近ランドルフが結婚をするかもしれない。もう結婚をしたの。と話題になっていて、自分に貢いでもらうお金が心配でこうして確認にやって来たのだ。
「ねぇ。ランドルフ。結婚するの?」
口元に両手を握り上目遣いにランドルフを潤ませちゃたで見上げる。
「あぁ、そうなんだよね。相手の事は知らないけど、政略結婚だよ。仕方がないよね。」
「でも・・・・。結婚したら、私たちの関係も終わっちゃうの。私、ランドルフの事を好きでもない人に貴方を取られちゃうの?」
潤ませた目から上手に片方の瞳から雫が流れる。
「えっ!でも結婚って、相手だけと寄り添うものだから。」
静かに涙を流すエメに動揺して手紙を勝手に見たことを知りながらも咎めることが出来ない。
「そんなことは無いわ。社交界では、男性が他の愛している女性たちと一緒に別で生活をしている人たちが多数いるのよ。ランドルフが純粋だから知らないだけなのよ。」
一筋だった雫は今では洪水のように両目から溢れ出ている。
「そうなの?でもね、セカンドハウスを出ろって言われているから。住む場所がないよ。」
「公爵家のマナーハウスがあるじゃない。そちらに移動すればいいでしょ?どこの誰かも知らない女性と一緒に暮らすなんてランドルフが可哀そうよ。愛し合っている私達こそが本物なのよ。」
「そうだね。エメがこんなに悲しんでくれるのに僕も、別れる事は出来ないよ。じゃぁ荷物はマナーハウスへ移すよ。これからも皆と一緒だよ。」
エメは、嬉しい。とランドルフに抱き着いて喜んだ。
「エメは可愛いね。」
「これからも今までと一緒よね?」
エメはランドルフを見上げて、尋ねた。それはランドルフが事通りに受け取った内容ではなくの今まで通りということをランドルフは全く気が付かなかった。
☆☆☆
壁が真っ白の部屋に豪奢な応接セットが置かれた部屋には、間を開けて座っている令嬢が二人いた。一人は妖艶なマーメイド・ドレスに身を包んだモニカ・エッセル子爵令嬢、もう一人は緑の髪にトパースの瞳をした愛らしさも持ちながら、着るドレスによっては妖艶さを醸し出す魔性の女と呼ばれているラビィ・ハント男爵令嬢。給仕されたお茶を飲みながら、ある人物を待って居た。
ノック音が響くと、少ししてその待ち人はピンクブロンドの髪を靡かせながら入って来た。
「お待たせいたしました。結婚するみたいですわよ。」
モニカとラビィが見えるようにテーブルの真ん中に盗んできた手紙を置いた。
「ふーん。本当なのね。公爵からの牽制かしら?もう無理かしらねぇ。」
モニカは一人掛けソファの背凭れに背を預けた。ラビィはカップを乱雑に置きながら、少し大きな声を出した。
「えーっ!好きなだけ買い物が出来たの、はランドルフだけだったのぃ。」
「でもね、ランドルフに涙ながらに訴えたらマナーハウスに移るって言っていたわ。それでも難癖をつけられたら、領地へ行けばいいんだし。領地へランドルフと一緒に行けば、行った人が奥様よ。だって、領地の人は奥様を知らないでしょう。事実婚よ。」
エメは、胸を張り、右手を胸に当てて得意げに言い放った。その姿を見たモニカは鼻を鳴らして横を向き、
「私はもう良いわ。ランドだけが男じゃないし、執着する程でもないし。二人でお好きなように。」
モニカは手をヒラヒラと振りながら背を向けて部屋から出て行った。モニカは今までの公爵家のやり方から見ても今後自分達へと咲くお金は出て来ないと予想して、社交界で惨めな思いをするくらいなら、ランドルフが結婚をするから別れた。という状況の方を選んだ。
(逃げるが勝ちっていう事を知らないのかしら。おバカさんたちね。)
モニカが居なくなったことで、エメとラビィだけになった。
「私は、もうしばらくはランドと一緒に居ようかしら。新婚生活にも興味があるし。ただ、私の邪魔はしないでよね。」
ラビィは牽制も込めて、エメを睨んだ。
「嫌だわ。ラビィったら。今までだって二人の邪魔をした事ないでしょ。私は状況を見て判断をする子なんだから。」
「あんたは計算して自分の良いように動くだけでしょ。私やモニカに遠慮なんかしていなかった癖に!」
吐き捨てて、ラビィは部屋を後にした。
「自分が可愛いのはみんな一緒じゃない。偉そうに!」
エメは顔を歪めて、ラビィが出て行った扉を睨んでいた。
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