質問コーナー ——①

大いに盛り上がったクイズ企画も最終問題を終え、幕を引いた。

結局、各々の点差は大して変動せず、最初から頭ひとつ抜けていたみのりの勝利となった。


「ん、さすが私。勝利」


余っている袖を体の前で揺らす。中できっと拳を握っているのだろう。


「さてさて、そこで沈んでいるなぎさは放置しつつ、次の企画に移りましょうか」


「さっちゃん辛辣!」


クイズ企画中ずっと水中潜航を続けていたなぎさは、テーブルに潜りそうな勢いで項垂れていた。


「触れて欲しいですか?」


「いえ……ケッコウデス……」


和かにスルーしたサクラに抗議の意を示すべく、がばりと勢いよく体を起こしたなぎさであったが、再び体を沈めて行った。


「……三倍」


「言わないでぇ〜……」


 勝者みのり敗者なぎさに嫌味のない煽り顔でそう言い放ち、さらに深く沈めた。

挽回すると息巻いていたなぎさは結局、あれ以降点を得ることはなく、みのりとの点差は彼女の宣告通りに三倍となってしまったのある。


「そんなことより次の企画に行こ?」


どこからともなくメロンパンを取り出し小さく咀嚼する紫月は半目で沈没船なぎさを見つめる。


「しづちゃんの視線が刺さるよぉ……」


「あらあら、質問がたくさん届いているわよ〜」


既に次の企画へとシフトしていたことねがスマホを見ながら言う。

各々も確認してみると、今回専用のハッシュタグに千を超える投稿があることが確認できた。


「それでは気を取り直して質問コーナーに移りましょうか」


「今回スタッフさんがハッシュタグに送られた投稿を自動で選んでくれるシステムを作ってくれたので、それをどんどん読み上げていくよ!」


どうにか気を持ち直したらしいなぎさが明るく予定された説明を口にする。


「NGワードもしっかり検出して弾いてくれるようになってるからほんとうちのスタッフ有能よねぇ〜」


「早速ひとつめの質問行ってみましょう!」


時間に誤差があるものの、予定どおりに企画は進んでいく。


【新しいメンバーが増えたということで、今年の皆さんの抱負はなんですか?】


「お、真面目な質問だね」


少し驚いたように見せるなぎさ。他の面々も少し思案するなポーズをとる。おそらく実際もう少しフランクな質問がくると踏んでいたのだろう。


「私は……そうですね、伊織さん初登場の時にもお話しましたが、メンバーが偶数になったので今までできなかったゲームをやりたいと思ってますよ」


「わたしはね!男の子が入ったからパワー系の企画ができそうで楽しみ!」


「んぅ、伊織の細腕で大丈夫?」


「が、がんばります!」


サクラは模範的とも言える回答を、なぎさはその動きからワクワクが隠せていない。


「あたしはそうねぇ……お料理企画でもやってみたいわね〜」


「伊織の料理、美味しいって評判。食べたい」


ことねがゆったりとした口調で告げた企画にメロンパンを口にしたままの紫月が珍しく話に食いついてきた。


「一体誰がそんなことを……」


「ひみつ」


いつもの調子に戻った紫月はまたメロンパンを齧る。


「んぅ、サクラに盗られた。身内だけで大会やってもいいかも」


「ボクは、メロンパンの大食い企画」


みのりが割と普通に抱負を語ったのに大して紫月がとんでもないことを言い始める。


「し、紫月?今日はどうしたのですか?」


【カロン】は他の確かに同系統のグループとは少し毛色が違い、ゲームだけに留まらず多種多様な企画をすることでも有名である。けれど、さすがにそこまでバラエティな企画は行ったことがない。


「ちょっとテンション上がってる」


いつもより口角が上がって見えるその顔はドヤ顔と言って差し支えないのだろう。


「えっと、何をドヤってるかよくわからないけど次の質問に行ってみよー!」


【カロンの皆さんの好きな鉱物は何ですか?あ、あと好物は何ですか?】


「鉱物って宝石とかのことでいいんでしょうか?う〜ん、アメトリンですね。以前見かけたものがとても綺麗ない色合いをしていたので。因みに好物は甘いもの全般です!」


「わたしはアダマンタイト!」


「なぎさん、それは架空の鉱石ですよ」


「あや?そうだっけ?」


「流石にRPGに毒され過ぎですよ……」


元気よく伝説の鉱石を挙げたなぎさに、若干呆れつつサクラがつっこみを入れる。


「因みに理由は何ですか?」


「最強装備との繋ぎで意外と長期間使ってなんとなく愛着が湧くからだよ!」


先ほどの元気にサムズアップも加えて答える。その様子にみのりたちはサクラと同じように少しの呆れを含ませた視線を送るが、浮かべる表情は「実になぎさらしい」というような温かい物だった。


「まだまだ沢山質問が来ているのでじゃんじゃん捌いていきましょう!」


 事前に募集した質問の他、配信上でコメントされたことにも答えつつといった流れで企画は進む。

段々と回答が雑になっていき、一問一答形式になってしまうのはもう少し先のお話。



—————

はい、最後の更新から2カ月弱経ってしまいました.......本当に申し訳ございません。


ちょっとだけ言い訳をさせてもらいますとですね‥‥‥


①作者引っ越しました。

思ってたよりも引っ越し作業が難航しまして....


②大規模企画の下準備

まだすべての情報をお伝え出来ないことが歯がゆいですが、準備しているとだけ伝えてよいと許可が下りましたので、この場を借りてご報告させていただきます。


先日ようやく落ち着くことができましたので更新を再開させていただきます。長らくお待たせしてしまい、申し訳ありません。そして、更新を更新を待ってくださった読者の皆様に感謝を。


P.S.

あ、作者合格しました。(受験報告をしていたことに読み返して気づきました)

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