クイズ企画——①
「はいは〜い!みんな見えてるかな?」
予定していた通りに始まった配信は、なぎさの顔がアップで映し出されている画面からスタートした。
:見えてるよー!
:全員揃ってのライブって久しぶりな気がする
「あ、見えてるみたいですね。それでは始めましょうか」
なぎさが自分の席に戻り、画角には全員が二段の形で映される。ちなみに伊織は下段の一番左だ。
「まずは皆さん、「「明けましておめでとうございます!」」
しっかりと新年の挨拶をした後に普段の自己紹介が始まる。
「【カロン】リーダーのサクラです!」
「ん。私が本物のリーダー、みのり」
「はいは〜い!なぎさで〜す!」
「紫月だよ〜」
「ことねよ〜」
各メンバーに決まった挨拶があるというわけではなく、それぞれその時に思った挨拶をいうという形だ。
「途中の虚偽発言は置いておいて、一ヶ月ぶりの登場の伊織さん!」
「はい、【カロン】のマネージャーになりました、伊織です!」
:待ってた!
:これが噂の…
「いっくんいらっしゃ〜い!」
なぎさが大きく手を振って伊織を歓迎する。
「一応伊織さんが加入前にメンバーとは顔合わせしているのですが、配信上では初になりますね」
視聴者に下手な誤解を与えないようにしっかりと情報を捕捉しつつ進行を続ける。
「ん。今回はお正月特別企画」
「今日の放送は三部構成になってるわ〜」
「えっと、クイズ企画・質問コーナー・ゲーム大会って感じで進めていくよ!」
「質問は概要欄にある質問箱とツイットで募集する感じ。ボクはそれを眺めて楽しむとするよー」
導入の説明についてはある程度台本が事前に用意されている。といっても、『誰がどの情報を言うか』ぐらいのものだが。
「新しい部屋づくりの動画についてですが、年末と重なってまだ発注できていないのでもうしばらく待ってくれると助かります」
軽く頭を下げて動画の公開が遅れる旨を伝えるとそれの返答がコメントで流れる。
:年末だと配送遅れるからね
:無理に配送頼むとすごい料金とられるからね…
:動画楽しみにしてます!
「さて、お知らせも終わったので企画を始めていきましょうか」
◇
サクラの言葉に合わせて配信画面が切り替わる。中央に問題が表示されてそれを囲むように伊織たち六人を個々でアップにした映像(絵)が配置されている。
「因みに今回この問題を作ったのは私、サクラなので司会をやらせてもらいますね。それでは第一問目行ってみましょう!」
【サクラの苦手な飲み物は何でしょう?】
「なるほど!こういう感じなんだね!」
なぎさが少しオーバーとも取れるリアクションをして見せる。
「1問目はメンバーというか私についての問題でしたが、他の問題はゲームの豆知識や基礎知識などを出題していきますので、視聴者の皆さんも一緒に考えてみてくださいね~」
出題についての説明をしている横でメンバーたちは次々と回答を記入していく。長年一緒に活動してきたからおかげか、その筆には迷いがないと見える。
:そういえば知らないかも
:食べ物の話は聞いた事あるけど飲み物は分からないなぁ
:お、伊織君も書けてるみたい
「全員の回答出そろいました!...流石にこの問題で不正解が出たら泣きますからね?」
「ん。大丈夫。多分。きっと」
「そこはかとなく不安なんですが…回答を見ていきましょう!」
配信画面上で一斉に回答が表示される。よく見るクイズ番組と同じ感じだ。
「伊織さん以外は“ブラックコーヒー”そして伊織さんは“チャイ”ですね」
サクラが出揃った回答を読み上げると伊織は思わず驚きの声をあげてしまった
「えっサクラさん、コーヒー苦手だったんですか!?」
「あれ?いっくん知らなかったの?」
伊織の声に今度はなぎさが驚く。
「だっていつもサクラさんホットコーヒーをブラックでお飲みになるので…てっきりお好きなのかと」
「あら〜?“独特な苦味があって得意じゃない“って言ってたのに〜大人の味がわかるようになったのね〜」
まるで我が子の成長を喜ぶ母親のような表情でことねはサクラを見つめる。
「…多分、伊織の前で大人な自分を演出したかっただけだと思う」
「ちょっとみのり?何言ってるの!?」
やりとりを少し静観していた紫月が口を開いた。
「ボク、正解知ってるよ」
「ほんと?しづちゃん教えて!」
なぎさが期待の目で紫月を見つめる中、当の本人は少し気まずいとも取れる微妙な表情で視線を逸らした。
「正解は両方。合ってるよね?サクラ」
五人の視線は一気にサクラへ移る。それが刺さるのか、少し身悶えしているようにみて取れる。
「……合ってますよ」
「あ。言い忘れてたけど、この企画はポイント制で、最後に一番多くポイントを持っている人が優勝。1問目は全員が正解したから全員1ポイント獲得。ぱちぱち」
「うぅ…なんでこんな問題採用しちゃったんだろう私…」
結果的に墓穴を掘ることになってしまったサクラ。
因みに、みのりが指摘した内容は見事に的中しており、ブラックを飲む練習がてら見栄を張っていたのだ。もし飲む速度が遅くても猫舌であると言い訳ができるし、注文しているコーヒーも苦味が少ない豆を選んでいるという、意外と編み込まれた戦略があったのはまた別の話である。
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一ヶ月ぶりです。気づいたらこんなに経ってました…申し訳ございません…
前回募集した質問コーナーですが、現在も受付中です!一人一回みたいな制限はありませんので、よかったらご参加ください!(全てを採用することはできません。ご了承ください)
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