タッグイベント ――①
そして時間はあっという間に過ぎて、イベント当日。
参加人数が多いことから、Day1Aを勝ち抜いたチームとDay1Bを勝ち抜いたチームがDay2で決勝戦を行うという流れになっている。
前回と同じようにオフライン大会となっているので、今回も僕は同伴することになった。
「さっき向こうのマネージャーさんから連絡がありまして、【カロン】の皆さんはもう控え室に入られたそうです」
先ほど入った業務連絡をメンバーに伝える
「何で向こうが先に着いてるんだよ!その辺の調整どうなってやがるんだ!」
大きなワンボックスカーの助手席に座る僕に届けるには十二分な声量で乱暴に言葉を放つ。
「ご、ごめんなさい」
「おい【をれっと】。お前はただでさえ声がデカいんだ。もう少し静かにしてくれ」
声量の大きさとパワフルなプレイを武器に活躍する【をれっと】前回優勝した大会のメンバーではなかったが、今回は参加することになった。
「お、わりぃわりぃ。でも俺が言っていることは間違ってねぇはずだぜ?」
一号に言われて少し声量を小さくしながらそう主張した。
「その点においては同意する。カロンのメンツを待たせたという情報が洩れでもしたら、俺たちのイメージが大きく傷がつく」
「はぁ~女子限定グループだか何だかしらんが、お高く留まりやがって」
そういって電子タバコを吸い始めるヨル。やはりそこにはいつもの気さくな様子は微塵も感じることはなかった。
◇◇◇
しばらく車に揺られていると会場に着いた。そこは前回優勝した大会の会場よりも大きく、ライティングも一層こだわっていた。
それもそのはず、この大会のスポンサーにはいくつものゲーミングデバイスメーカーやPCパーツメーカーが名を連ねているのだ。
その中には【祝い酒】のスポンサーでもあるValkyrieの名前もある。
「いやーカロンの皆さん!到着が遅れて申し訳ない。本来は我々が早く来るつもりだったんですが、如何せん渋滞にはまってしまいまして」
カロンのメンバーたちが待つ控え室に入ると、ヨルは車での様子がまるで嘘のような挨拶をして見せた。
「全然気にしないでください。まだ大会開始時刻まで全然余裕がありますからね」
カロンのメンバーを代表するようにサクラが返事を返す。
「そういって貰えるとありがたいです」
そんな会話を後ろに控えて聞いていると、カロンのマネージャーさんに手招きされた。
「伊織さん、ちょっと」
呼ばれるままに控え室の外に出る僕。
「どうかしましたか?」
「いえ、実はサクラさんからの伝言がありまして...」
カロンのマネージャーさんが僕に耳打ちで話してくる。
僕はその内容に驚きつつも了承したむねを伝えるために頷く。
「それじゃあ、伝えた通りにお願いします」
カロンのマネージャーさんは伝えることを伝えたあと、どこかへ去っていった。
時間を確認するともうすぐ現場入りしないと行けない時間だ。
そのことに気づいた僕は直ぐに控室の扉をノックした。
「失礼します。そろそろお時間が...」
「分かっている」
どうやら何かの邪魔をしてしまったらしく、人前で出さないような強い語気で言葉を発した。
「あ、ごめんなさい」
「いいえ、助かりましたよ?ありがとうございます。ほら、みんなそろそろ行こっか」
サクラさんは優しく僕に話しかけてくれた後、カロンのメンバーを連れて控え室を後にした。
「...チッ、おい、俺らも行くぞ」
律儀に彼女達が扉の向こうに消えるのをまって、ヨルは舌打ちをして移動を始める。
僕がいつも最後に部屋をでて色々確認するので三人が出るのを待っていると、すれちがいざまにをれっとは嫌味たらしく耳打ちしてきた。
「お前、あんま調子乗るなよ?」
苛立つ視線を僕に飛ばしながら歩き、最後は乱暴に扉を閉めた。
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