第六章 こんなデカブツに勝たなきゃいけなかったりするのか、おい?
「怖く、ないか……?」
俺は、傍らにいる女性に、問い掛けた。
「……コウさん?」
彼女が、……ネ子が振り向き、不思議そうな顔をする。
「怖いですけど?」
「そ、そうか……」
あっさりと言われ、俺は言葉に詰まる。
「何つーか、……その割には冷静そうに見えるんだがな」
「そうですか?」
ネ子は小首をかしげ、
「言われてみれば、確かに、『思ったよりも大きいなあ』なんて思ってましたけど、これって冷静だからそう思えるのかもしれませんね」
分かっているのか分かっていないのか、……分からないことを言った。
「そうかもな……」
俺はネ子から視線をそらし、“そいつ”を見つめた。
俺たちの視線の先には、王城へと続く中央通りを直進してくる巨大人形兵器(……あ、人型破壊兵器とかになったんだっけ、こいつの愛称(仮)?)の姿がある。
騎士団や護衛の兵士たち(それに、この街に住んでいる〈冒険者〉たちが)が何とかして止めようと攻撃を繰り返しているが、その鋼鉄の巨体にはほとんど効いていないようだ。〈武闘家〉の一撃でも破壊できない強度を誇る装甲だ(それも試作機の時点で、だ)。残念ながら、破壊して進攻を食い止められる可能性は無きに等しい、な。
「また、デカくなってやがるな……」
「そうなんですか? 頑張ったんですね、博士さん」
……そういう問題でもない気がするんだがな(今は言うまい)。
「それより、コウさん」
「何だ?」
「どうかしたんですか? いつもと違いますよ?」
……こんな局面でいつもと同じ態度を求めるなよ。
「――そうか?」
「ええ、顔色が良くないです。ひょっとして、緊張してるんですか?」
「……まあな」
本当に、分かっているのかいないのか、“分からない”という態度を取り続けるネ子に、
「その、……怖いんだよ」
俺は、つい正直に言ってしまう。
「あんな巨大な兵器に対峙するのも怖いし、失敗してみんなの期待を裏切るのも、怖い」
「コウさん……」
労わるような視線を向けてくるネ子に、
「断っても良かったんだぜ?」
そんなことを冗談めかして言ってみる。
「……え?」
ネ子は目を一瞬まるくしたあと、……微笑んだ。
「ふふっ。言われてみれば、そうですね。今、気がつきました」
「……相変わらず、天然だな」
「そうかも、しれませんね」
屈託なく笑うネ子に、
「どうして、俺に、ついてきたんだ?」
そんなふうに笑える気がまるでしない俺は問い詰めるかのように聞いてしまうのだが、
「どうしてって、……コウさんが私のことを必要としてくれたからです」
『何を当たり前のことを聞くんですか?』と言いたげな調子で答えるネ子に苦笑を浮かべるより他にない。……そうだよな、ネ子ってそういうやつだったよな。
「そうか。何だか、貧乏くじ引かせたみたいで悪かったな……」
何だか悪いことをしてしまった気がして目を伏せる俺に、
「いいえ」
ネ子は首を振り、
「きっと何とかなるから、大丈夫です!」
根拠など何もないはずなのに、自信ありげにそんなことを言った。
「ネ子……」
見つめる俺に、
「私も怖いけど、大丈夫ですっ!」
再び断言して、柔らかな微笑みを浮かべた。
「どこから、その根拠のない自信は湧いてくるんだ?」
「わかりません」
そんなことまで迷いなく断言して、
「でも、信じられるんです。私には」
ネ子は俺を見て、……笑った。
『あなたのことを信じていますから、大丈夫です』
――そんな、顔で。
「……まったく」
俺は呆れたようなため息をついた。
「――バカだよ、お前は」
「そうですね」
『そうかもしれませんね』とかじゃなくて、ネ子はまたしても(あっさりと!)言い切って、
「でも、少なくとも、できると信じないと、できることもできないんじゃないですか…?」
俺のことをまっすぐに見つめた。
「そうだ、な……」
俺は視線を逸らしてつぶやいた。……確かにその通りだけど(ネ子の口から聞くと、何だかものすごく違和感あるけれど)(苦笑)、今の俺にはそんなこと言えない。……信じ、られない。
(くそっ! ……俺って、こんなに情けないやつだったのか……?)
唇を噛み締める俺に、
「――コウさん?」
ネ子の声が聞こえ、
「……ん?」
顔を上げた俺の、
むにっ。
――両頬をネ子がつまんだ。
「にゃ、なにほするんは、おまへは」(「な、何をするんだ、お前は」と言ったつもり)
「うふふ」
ネ子は指を離して微笑んだ。
「いつか、私に、こうしてくれましたよね? 緊張に押しつぶされそうだった私に」
「……ああ」
覚えてたのか、あの時のこと。
「あの時、貴方が言ってくれた言葉、お返しします」
「え?」
「ええと。……『肩の力を抜け。お前、緊張しすぎですごい顔してるぞ? 息つめてばっかりじゃなく、そーやって、たまには息を抜いてみな』、……コウ?」
……ああ、
「深呼吸、するんだっけか……?」
自分がいつか彼女に言ったセリフを思い出して、俺はネ子に笑いかける。
「はい。……肩幅に足を開いて、」
ネ子は、いつだか、俺がネ子にやったことをそのまま繰り返す。
「まず、両足を肩幅と同じぐらいに開いて、」
「ああ……」
「次に、両腕から力を抜いて身体の脇に垂らして、」
「うん……」
「肩から力を抜いて、目を閉じる」
「おう……」
俺が目を閉じるのを見計らって、ネ子は優しく号令をかけてくれる。
「はい、吸って~」(すうぅ~~)
「はい、吐いて~」(はあぁ~)
「はい、もう一回、吸って~」(すうぅ~~)
――いつの間にか、世界から音が消える。
……周りが、まったく気にならなくなる。
彼女の存在だけが鮮明に意識される。
それはさながら、暗闇の中の一筋の灯火のように俺の進むべき道を照らし出してくれた。
そんな気が、した――
「――落ち着きました?」
ネ子の声で目を見開いた俺の心は、
「……ああ」
――不思議なほどに、落ち着いていた。
「ありがとよ、ネ子」
「いいえ」
素直に礼を述べた俺に、ネ子は嬉しそうに首を振る。……やっぱり、お前を連れてきて正解だったよ(なーんて、言えねーよなぁ、俺には)(微苦笑)。
「さて、……行くか!」
「はい!」
俺とネ子は笑顔を交わしつつ、目前の敵へと向かって駆け出した。
「クロウどの!」
人型破壊兵器攻撃の指揮を前線で執っている人物を認めて、俺は駆け寄った(街のあちこちから火の手が上がっているから、破壊活動の別働隊みたいなやつらもいやがるんだろうけど、そいつらには別の王国兵士の隊が対応してるんだろう)。
「おお、王子! ご無事でしたか!」
俺の姿を認めて、クロウどのが声をかけてくる。
「王子とか言うのは止めてくれよ」
「しかし、王子は王子ですので」
生真面目に言うクロウどのに苦笑して、
「ちょっとやってみたいことがあるんだ。協力、してくれるか?」
俺は“命令”ではなく、『お願い』してみる。
「あんなバケモノ相手に何を? それより、避難を! 王子さえ、……王家の血筋さえ無事なら、国は再建できます!」
「逃げるのは、手を尽くしてからでも遅くない。仮にも、国を治めるとか言ってるやつらが、真っ先に逃げ出してたんじゃ、カッコつかないだろ?」
「し、しかし……」
「あのバケモノの中に乗っている人物と話ができる手段を、俺は持ってる。だから、俺が説得している間、攻撃しないでいるだけで、……誰も近づけないでくれるだけで、いい」
「……コウさん?」
ネ子が小声で口を挟んでくる。
「あ、ネ子以外はだ、ネ子以外!」
俺は慌てて付け加える(作戦、忘れるところだったよ)(汗)。
「俺が説得して足止めしているうちに、こいつ(ネ子)があれ(人型破壊兵器)に登って動きを止める。説得に失敗した場合のもしもの保険だ」
「し、しかし、……本当に、よろしいので?」
戸惑いの視線でネ子を見つめながら聞いてくるクロウどのに、
「こいつを危ない目にあわせたくはねーが、緊急時だ」
俺は苦笑いしながら答えたのだが、
「よろしいのですか?」
クロウどのはもう一度、今度はネ子本人に聞いている。……って、あれ? 最初からネ子に聞いてたのか?(だとしたら、こっ恥ずかしいな、俺)(汗)
「ええ。必要とされる時にお役に立てるのは、光栄です」
微笑みを浮かべながら躊躇いなく頷くネ子に、
「そうですか。貴女の勇気に、この不肖クロウ・ニーン、感服いたしました。どうか、ご無事で!」
クロウは深々と頭を下げた。いや、別にそんなに気を使わなくてもいいと思うぞ?(ネ子は王族とかじゃねーんだから)(ひょっとして、俺の前だから気を使ってるのか?)(苦笑)
「ところで、あのバケモノと会話できる手段はどこから得たのですか、王子?」
頭を上げたクロウどのは、今度は俺に向き直るとそんなことを聞いてくる。……いや、別に『バケモノ本体』と会話するんじゃなくて、『中の人』となんだが(汗)
「ん? ま、まあ、そんなことはどうでもいいだろ、……ってワケにも行かないか。後で説明する」
無理を言うんだ。それぐらい説明しないとクロウどのにも悪いよな。
「分かりました、王子!」
不承不承(というにはどこか嬉しそうだったけどなー)(……だから止めてくれよ。『頼もしい王子だ』みたいな視線で見つめるのは)(苦笑)、クロウどのは了解の意を伝えてきた。
「兵士たちだけじゃなくて、足止めに協力してくれてるこの街の〈冒険者〉たちにも攻撃を自重するように伝えてくれ!」
「了解です!」
びしっと敬礼をするクロウどのに頷きを返して、俺はネ子に向き直る。
「それじゃあ、頼むぜ、ネ子。言うまでもないだろうが、くれぐれも気をつけてな?」
「はい。……コウさんも、お気をつけて」
笑みを交し合った俺たちは、それぞれの役割を果たすべく走り出した。
「博士! 止まってくれ!」
俺は、クロウどのから借りた白馬にまたがり、人型破壊兵器の前に躍り出た(指示通り人型破壊兵器に対する攻撃は止んでいる)。ノーマさんから借りたペンダントに向かって叫んだから、多分、博士には聞こえてると思うんだが……。
『この声は、……あの時の若いのか?』
ペンダントから、博士の声が返ってきた。
「はい!」
よし、接触には成功した。後は、説得するのみ!
『止めるな、若いの。ワシはやらねばならんのだ』
歩みを止めない人型破壊兵器の前を常に一定の距離を置くように馬を走らせながら、俺は叫んだ。
「ノーマさんなら助けた! あんたが破壊活動をしなきゃいけない理由はもうないんだ!」
『そんな口車にワシがのせられるとでも思うたか?』
「俺が、ノーマさんのペンダントでこうやってあんたとしゃべってるのが何よりの証拠だ! ノーマさんから借りたんだ。あんたを止めるのを条件にな」
『そんな言葉が信じられるか! お前等は、自分の欲望のためならなんでもする輩ではないか!』
……ここで、『俺はそんな人間じゃない!』って言っても説得力がねーな(苦笑)。別のところから説得してみるか…。
「このペンダントのことは、あんたとノーマさんだけの秘密だと聞いた。そうじゃないのか?」
……まあ、実際には、ノーマさんがペンダントを使っているところを見れば誰にでも分かると思うけど、それは今は言うまい(ヨネーたちは見ていないから知らないはず、だ)(多分)。
『確かにそうだったが、拷問してそのことを聞き出したのやもしれぬ。そしてそのことを吐けば、ノーマを生かしておく理由はない。これも世界征服の第一歩! ノーマの手向け(たむけ)に、手始めに王家のやつらを血祭りにあげてやるわい!』
「そんなこと、誰も望んじゃいない! ノーマさんからも、あんたを頼むって言われたんだ」
『ノーマがそんなことを言うはずがない! 誰よりもワシのことを理解し、これまで世界征服の手伝いをしてきてくれたのじゃからな』
「じゃあ、聞くけど、……あんたの方は、ノーマさんのことを本当に理解しているのか? ノーマさんは言っていた。『博士は、優しい人です。世界征服なんか、本当は、どうでもいいんです。好きな研究に打ち込めて、それを世間が認めてくれさえすれば満足できるはずです』ってな」
『そ、そんなことをノーマが言うはずが』
「言ったんだよ。確かに彼女が自分自身の口で」
『そんなはずはない! そんなことを絶対に言うはずが、ない!』
……ずいぶんと意固地だな。少し、攻め方を変えてみるか。
「そんなんじゃ、ノーマさんすら失っちまうぞ?」
脅すかのような口調で、わざと俺は言ってみる。これで動揺してくれるなら少しは突破口も見えるかもしれない……!
『せ、世界征服の野望を抱いた時から、犠牲は覚悟の上じゃ! それは、ワシの“娘”たるノーマも例外ではないわ!』
「例え、世界を征服できたとしても、誰もあんたのそばにいないんじゃ、意味ねーだろ?」
『なんじゃと?』
怪訝そうに聞いてくる博士。……よし、ここが勝負どころだ。
「あんたには“娘”が、…近くにいて支えてくれる人が、ノーマ・ルーが必要なんじゃねーのか?」
『ワシにとって世界とは、ノーマのことだというのか?』
「そこまで言ってねーけど、ある意味、あんたにとってはそうなんじゃねーのか?」
畳み掛けるように俺は言葉をつないだ。
「だいたい、あんたは、どうして、世界を征服したいなんて思ったんだ?」
『それは、……世界がワシのものになれば、誰もワシのことを無視したりしなくなるじゃろうから、』
「なるほど。じゃあ、ノーマさんは、あんたのことを無視したり一度でもないがしろにしたか? いつでもあんたのためだけに尽くしてくれてたんじゃねーのか?」
『それは、……ワシがノーマをそのように作ったから、』
「ノーマさんと話してみて考えたよ。『どうしてノーマさんは、こんなにあんたのことを大事にしてるのか?』って。彼女は詳細な分析も出来るし、それに伴った正確な判断も出来る。それなのに、どうして、こんな、『世界を征服する』なんて口走るイカレた博士のことを支え続けるのかって」
『だから、それは、ワシがそのように仕込んだからで、』
「ノーマさんの態度は残念ながら作られたものなんかじゃねーよ。仕込んだとか、教えたとか、そういう理由じゃ説明できない」
『ならば、どう説明するというのだ?』
「それは、彼女が、――あんたのことを好きだからだ」
そう、俺は結論付けるしかなかった。博士を止めるための方便なんかじゃなく、残念ながら、俺にはそうとしか思えなかったのだ(自分で言ってても、信じられないけどなー)(苦笑)。
『ワシのことを好き、だと? ワシに作られた発明品が? 戯れ言をいうのもいい加減に、』
「そしてもうひとつ、――あんたもノーマさんのことが好きなんだろう?」
『な、なにを』
「そうでないなら、どうして、彼女のために王城に向かってるんだ? こんなことをしてただで済むはずはない事を知っていながら、どうしてあんたは戦っているんだ?」
『そ、それは……』
「彼女が作られた存在だからとかそんなのは関係なく、あんたにとって、ノーマさんは大切な人なんだ。ただ、それだけなんだろ?」
ノーマさんの想いも込めて、俺は言った。
「投降してくれ、博士。ノーマさんを悲しませないために」
しかし、
『……できん』
「博士!」
博士は再び、頑なに拒絶の意を示した。そんな、どうして……?
『だが、ノーマが無事であることは信じよう。さらばだ』
「博士?」
不審に思った俺が聞いた瞬間、
突如、背中についた筒のようなものから人型破壊兵器は大量の煙と炎を噴出した!
「博士っ!?」
『ノーマによろしく頼む』
「博士~~~!」
呼びかける俺の声も空しく、天高く飛翔した人型破壊兵器は、
――街から少し離れた場所で自爆、した。
「……そんな、博士……」
これで当面の危機は回避できたんだろうが、俺の心には言いようのない悲しみが溢れていた。
「ごめんよ、ノーマさん。俺、博士を助けられなかった……」
信頼して俺にペンダントを託してくれたノーマさんの想いを裏切ってしまったことが、ただ、悲しかった。
「ん? ……そういえば、何か忘れてる気が……?」
首を捻った俺に、
「コウさ~~~ん」
上から聞き覚えのある声が聞こえてきたので何気なく振り仰ぐと、
「うわ、ネ子っ?!」
高い建物の窓枠にかろうじてぶら下がっているネ子の姿を見つけて愕然とする。
「ど、どうして、そんなところに!?」
「き、緊張しちゃったせいか、人型破壊兵器にロープを引っ掛けるのを何度も失敗していたんですが、さっきようやく成功して、さあ登ろうと思った時に、突然、機械から煙が出たので、慌てて逃げたんです~」
「と、取りあえず、降りろ、ネ子!」
「はいです~」
その後、無事に(落っこちねーかと冷や冷やしたぜ…)下に降りてきたネ子と合流して、
「……お前がドジで良かったぜ……」
俺は妙なことを口走っていた。
「え?」
目を丸くするネ子に、俺は苦笑しながら安堵の笑みを向ける。
「もし、お前が、凄腕の〈盗賊〉だったりしたら、今頃はあの機械と一緒にお陀仏だったかもしれないじゃねーか」
「あ、あはは~」
彼女は俺の言葉に引きつった笑みを浮かべた後、
「……あの、博士さんは……?」
ぎこちなく聞いてきた。
「……ああ」
俺は爆発の余波で煙っている空に視線を向けながら口を開いた。
「自爆、しちまった。……きっと、自分のとばっちりがノーマさんにまで及ぶのを恐れたんだろう。言ってたよ、俺に。『ノーマによろしく頼む』ってさ……」
「そんな……」
悲痛な面持ちになってしまうネ子をどうやって慰めようかと考えかけ、
「ん?」
俺はあることに気がついて首を傾げた。
「そういや、『ノーマ“に”よろしく頼む』って言ってたよーな…?」
(あ、……!)
あることに思い当たって、俺は思わず手を打ち合わせた。
「ひょっとして……!」
(……確か、モーと一緒に研究所に言った時、ノーマさん、いろいろ言ってたよな……?)
何も音を発しないペンダントを見つめて、俺は内心、つぶやいた。
「……そういうことか、やるな」
「え?」
何のことやら分からず、目をぱちくりさせているネ子に、俺はニヤリと笑いかける。
「俺の推測が当たってたら、ちゃんと教えてやるよ。まったく、博士も人が悪いっつーか」
「?」
「目の前のことだけを見るな。もしかしたら見せ掛けかもしれないと疑う想像力を持てってことさ」
「見せ掛け……?」
「そうそう、見せ掛け……」
まるで事態が飲み込めていないネ子にヒントを出すかのように言ってやった俺だったのだが、
(……待てよ?)
その『見せ掛け』という言葉が引っかかり、首を捻った。……どうして、こんな、巨大兵器の襲撃とか大袈裟な“仕掛け”が必要だったんだ? ひょっとして、兵士たちの目を、俺たちの目をそらすためじゃ、ないのか……?
「……ネ子」
「何です?」
「急ぐぞ」
「えっ? ちょ、ちょっと、コウさん?!」
ネ子の声を背中で聞きながら、俺は全速力で駆けた。
――間に合うと、いいが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます