いんたーみっしょん。(その5)
王都タルムニス某所。
「……よし」
自分の装備を確認し、歩き出そうとしたワーキヤーク・ダ・ヨネーであったが、
「……ご出陣ですか、ヨネー様?」
「! セン=ニンか……」
突然、後から声をかけられて振り向くと、そこには、参謀であり相談役であり、……育ての親でもあった白いローブの男の姿がある。
「いいのか? 陽動隊の頭たる貴様がこんなところにいて?」
「はい。まだ、間に合いますゆえ」
いつもどおり、感情と言うものがまるで読み取れない男の様に、ヨネーは苦笑を浮かべる。
「見送りは不要だと言ったではないか?」
「はい。ですが、ヨネー様は次の王となるお方。礼儀は尽くしておきたく存じます」
「フン。まあ、あまり分がいいとは言えない賭けだが、必ず成功する男だからな、オレは」
あくまで慇懃な態度を崩さないセン=ニンに、ヨネーは口元を歪めて断言してみせる。
「オレは、逆境の中でこそ輝く。……そのように、貴様に育てられたのだからな」
「はい、……信じております」
「フン。せいぜい、祈っていてくれ。神様というやつにでも、な」
セン=ニンに言い残して、ヨネーは戦場へと歩き出す。
「……ヨネー様」
「何だ?」
躊躇いながらも呼び止める声にヨネーが振り向くと、珍しく、どう言葉を掛けようか迷っている様子のセン=ニンの姿を認め――少なくともヨネーは、セン=ニンが躊躇うところなど今の今まで見たことがなかった――、思わず苦笑を浮かべる。
「どうした、貴様らしくない。安心しろ、オレは死なぬわ。勝って、生きて、目的を必ず果たす!」
「……はい」
ぎこちなく頷いた白いローブの男は、ようやく掛けるべき言葉を見つけたように口を開いた。
「ご武運を」
「ああ、貴様もな!」
ヨネーは力強く頷くと、決戦への一歩を踏み出したのだった。
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