いんたーみっしょん(その4)

「……『またな、ネ子』、かぁ……」


 橋の袂に佇んでいるネ子は、何となく、コウの口真似などしてみる。


 声は当然違うのだが、口調や抑揚などはとても良く似ていた。〈盗賊〉として常に他人を観察しているからだろうか? 仲間として一緒にいるうちに覚えてしまったのだろうか? 


 それとも、――いつも自然と目や耳で追っているからだろうか……?


「……コウさん」


 そっと、名前をつぶやいてみる。それだけで、彼女の口元には嬉しげな笑みが浮かぶ。


「うふふ♪」


 帰ってもいいのだが、ここから動くのが何故か、もったいない気がする。


 そんな気分で、思い出し笑いなどしているネ子の背後で、



 かさり。



 ……と、ほんのかすかな物音がする。


「誰?」


 女〈盗賊〉は音がした方に振り向いた。


「ひょっとして、コウさん? まだ、いらっしゃったんですか……?」


 彼女の浮かべた、少しだけ照れたような笑顔は、


「! あなたは……」


 姿を現した顔見知りの人物を認めた瞬間、ぎこちないものへと変わったので

あった――

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