いんたーみっしょん。(その3)
「そうか、やはりあの若者が……」
王城にて、現国王イダイナール一世は、もっとも信頼できる臣下、クロウ・ニーンを前にして呻いた。
「一目見て、あまりにレイナに面影が似ているのでもしやと思っていたが……」
「はい。……ご見識の通り、第二王妃様が襲撃された際に行方不明となっていた王子のおひとりであらせられるようです」
クロウ・ニーンの言葉を受け、イダイナール一世はため息を漏らす。
「まさか、十七年前に死んだと思うておった王子が、二人とも生きておったとは、な。本来なら喜ぶべきことなのだろうが、このような複雑な事態になっていようとは」
「心中、お察しします」
クロウ・ニーンはそう言って一度目を伏せた後、報告を再開する。
「コウ様の現在の姓は、王家の遠縁に当たる貴族、シュ・ジーン家に養子として迎えられたためのようです。現当主、シュ・ジーン・サマーに跡継ぎがいなかったためとされていますが、おそらく、あの方の手引きなのではないかと……」
「ふむ。あの方のお考えは凡夫たるワシらにはとてもうかがい知れぬからな」
「はい……」
「わしも、若い頃はさんざんあの方に、タルムニア様に振り回されたものよ」
思い出しているのか遠い目をしてしばし苦笑した後、イダイナール一世はふたたび口を開く。
「あの若者、“試練の洞窟”を抜けたと聞いたが?」
「はい。ただ、賊も同時に“資格”を得てしまったのは誤算でしたが……」
「それは仕方あるまい。王子もタルムニア様も無事だったのだ。これ以上のことはあるまい」
「はっ」
かしこまるクロウに、イダイナール一世はため息をついた。
「しかし、……ワシにまで黙っていたとは、な」
「それも、何か、お考えがあってのことと思いますが……」
「ふむ?」
顔を伏せたままのクロウをしばし見つめた後、
「探って、みるか」
国王は短く、言う。
「はっ」
クロウ・ニーンはかしこまると、すぐさま行動を開始したのだった。
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